「ジャムカ、お前の勝ちやな・・・チッチキチー」蒼き狼 地果て海尽きるまで kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャムカ、お前の勝ちやな・・・チッチキチー
なぜか松方弘樹の声が大木こだまを意識しているような気がしてならなかったのですが、テムジン(反町隆史)とジャムカ(平山祐介)がやってきたときに「そんな奴おらへんやろー」とか「そらアホやでー」と言ってくれたら最高だったと思います。
この映画を観るために米映画の『ジンギス・カン』(1965)を見直しました。オマー・シャリフがジンギス・カンを演じ、騎馬戦一騎撃ちのシーンなどはなかなか良かったのですが、ジャムカが徹底的な悪役を通していたところなど、さすが敵をはっきりさせたいハリウッド映画はちょっと違います。なにしろモンゴル統一というテーマではなく、侵略を繰り返して世界の半分を領土とする英雄として描いた映画だったのです。ちなみに史実は滅茶苦茶だった・・・
この森村誠一原作の角川映画では「戦争の被害者はいつも残された女である」といったテーマや、エディプス・コンプレックスにも似た「蒼き狼の血を証明したい」と願う息子ジュチのテーマがあった。夫人の強奪や敵将の子を身篭ること。戦乱の時代では当然のように言われていたが、悲しき家族の運命はとても辛いことであることは想像しやすい。それがテムジンの出生の秘密とも被り、運命の皮肉を一層盛り立てる。圧倒的なスペクタルと腹にも響く騎馬軍団の地響き効果も凄かったけど、英雄伝の裏に隠された人間ドラマが印象に残ります。
俳優の演技としては、テムジンの母親役である若村麻由美が最も良かった。韓国の新人女優Araは日本語が上手い。津川雅彦は美味しいところを持っていた・・・いい演技が多かった中で、菊川怜が全てを台無しにしてしまったといったところでしょうか。なぜ菊川怜が選ばれたのか。もしかするとモンゴル顔だから?などと考えてみたけど、本来日本人の多くはモンゴル系。映画でも日本語が使われていることがおかしいといった議論もどこかおかしい・・・
それにしても角川さんはまた巨額の投資をしたものです。たしかにモンゴル人のエキストラ効果でCGに頼らない迫力映像となりましたが、それならなぜもっと早くに映画化しなかったのか。構想27年という謳い文句があるため調べてみると、27年前には加藤剛主演のテレビドラマがあったのですね(井上靖原作)。これを映画化しようと考えていたけど、井上氏からは映画化の了解がもらえず、後にかつての角川秘蔵っ子森村氏が書いてくれた(もしくは書かせた)ので便乗したというところなのか・・・妄想中。