ネットフリックスでPaddleton(2019)という映画を見たことがある。マーク・デュプラスとレイ・ロマノがでていて、末期がんのデュプラスが安楽死するのを、ロマノが看取るという話だった。
副題がA Comedy of Dramatic Proportionとなっていて死ぬ話が軽やかに描かれる。そのレビューにこう書いた。
『比較する脈略はないのだが、分かり易くするために比較すると、日本映画にこんな大人な脚本はない。ライフスタイルが違うからというより、やはり達観の度合いが違うからだと、個人的には思う。邦画には死がドラマチックに描かれない立地はあり得ない。
ただし映画全般と比べてもPaddletonの死生観には驚きが伴う。驚きと言っても叫喚するやつじゃなく静かな動揺で、それが大人な脚本の根拠だが、この際の大人とは、日本人が指し/使う大人よりふたまわりほど大人っぽい。個人的には見たことがない達観だった。』
忘れられない映画で、レイロマノもそれで覚えていた。
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レイロマノ、キャリアは長いが監督業は本作Somewhere in Queensがはじめて、とのこと。じっさいにもクイーンズ区で生まれ育ち、ナンニ・モレッティとかジェームズ・L・ブルックスのような家族で大団円へ至る話を目指す感じ。風貌は徳井義実で頼りない感じの人物を演じる。
イタリア系アメリカ人のレイルッソ(ロマノ)はクイーンズで親兄弟と施工屋をやっている。
人はいいのだが押しの強い個性に囲まれると優柔不断がでてしまう。日々やり手な弟にばかにされる兄だ。
息子の“スティックス”(Jacob Ward)は自閉症だったがバスケットボールに開眼して特待進学できるチャンスを得る。そんな時期、スティックスには彼女ができる。
彼女のダニ(Sadie Stanley)は遊び人で、興味をもったスティックスに声をかけ、付き合うようになったものの童貞で自閉症とは知らず、詩なんか作って読まれたから、相容れないものを感じ、別れてしまった。
失恋してふさぎ込むスティックスを見て、父親のレイは「大事な時期だからせめて大学に入学するまではつきあってやってほしい」とダニにお願いする。
それはスティックスのためというよりは“なんか父親らしいことをしたい”という自分のためだった。・・・。
初監督といえどもキャリアに裏打ちされたプロフェッショナルなつくり。兼主演として、優柔不断な男の演技もはまっていた。いい映画だった。
imdb6.8、RottenTomatoes90%と92%。
スティックスとダニのように地味男子と派手女子のような組み合わせは案外珍しくないと思う。
10代のあたりでは女子がまぶしいというのがある。たいがい男子よりもはやくバージンを喪失し大人とつきあったりしている。そういう子が躊躇することなく二股してこっちともつきあってくれたりする。男子がまだ少年で裸に憧憬や妄想をしている間に女子はとっとと下半身を排泄以外のことに使いはじめる。
が(20代~50代と同窓会に出てきた者の感慨だが)40代くらいに至るとどんなキラキラも消えて全員平らに均されて過去に埋没する。