「一本気な女性の生涯」風よ あらしよ 劇場版 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
一本気な女性の生涯
NHKBSで放映されるときから気になっていたが、テレビで見るには重すぎる感じがして見そびれていた。今回劇場公開されてじっくり観たが、スクリーンで観るだけの風格のある作品となっている。
とにかく主人公伊藤野枝の一本気さ、純粋さに目をみはる。当時の男尊女卑の社会の中で、自らの思いを貫き通したことが、いかに凄いことか。結末を知っているだけに、ハラハラしながら観てしまう。
「恋多き女」のイメージで語られてきた彼女だが、史実は別にして、それぞれの決断が必然であったように描かれている。ちなみに、辻潤の尺八好き、大杉栄の吃音は史実どおりのようだ。
彼女の最期は、はっきりとは描かれないが、「福田村事件」といい、関東大震災から100年というこの時期に思い起こすべきもの。それにしても、甘粕大尉がこの後、満州国のフィクサーになるのだから、おそろしいものだ。
俳優陣は、脇役も含めてNHKの大河や朝ドラでお馴染みの面々。吉高由里子は、以前は舌足らずな話し方が気になっていたが、すっかり女優としての凄みや貫禄が出てきた。
吉田喜重の「エロス+虐殺」もどこかで観られないだろうか。
コメントする