劇場公開日 2024年10月25日

「子どもたちの集団と悪い未来」リトル・ワンダーズ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0子どもたちの集団と悪い未来

2024年10月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2023年。ウェストン・ラズーリ監督。ワイオミングの大自然の中、シンプルなダートバイクを操る三人の小学生はゲーム機を盗んだり食品を万引きしたりやりたい放題。母親にパスワードを設定されてゲームができなくなった彼らは、交換条件としてブルーベリーパイを手に入れることに。ところが、最後の材料である卵を大男に横取りされると、大男から奪い返えそうと躍起になる。その男が実は不思議な集団に属していて、、、という話。
16ミリのフィルム撮影でノスタルジックな色彩と不思議な物語が展開しているが、子どもたちの集団と大男の集団の対比がミソ。実は二つはとても似ている。ともに犯罪も辞さずにしたいことする「快楽原則」に忠実なグループであり(●●団という名前が示す通り)、リーダーは女性であり、恋愛とは異なる構成原理で結ばれている。違うのは、子どもたちの関係は「平等」だが、大人たちの関係は「支配」で結ばれていることだ(劇中の「呪文」の存在は唐突でとても不思議だが、「支配」関係を表す比喩だと考えればすんなり納得できる)。「平等」は「よいグループ」の証であり、「支配」は「悪いグループ」の証なのだ。そして、この二つは移行可能である。大人グループのリーダーの娘が子どもというだけであっという間に子どもグループの一員になってしまうのだから。逆に言うと、子どもたちの「よい集団」は、あるところで道を誤ると、大人たちの「悪い集団」になってしまうということだろう。今回の冒険が教訓となって、彼らにそうした未来はやってこないだろうけれども。
最後近く、子どもたちはダンスを踊ってキスをするが、大人たちは脅迫して殴り合う。教訓を待たずとも、子どもたちの未来が明るいのは間違いない。

文字読み