「旅は大人の階段を昇る通過儀礼」グレース regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
旅は大人の階段を昇る通過儀礼
ロシア南西部の辺境にあるコーカサスを征く、年齢不詳で名前も明かされない父と娘のロードムービー。違法DVDを売り、巡回上映をする事で生活費を稼ぐ2人が、何の目的に旅をしているかは明示されない。ハッキリしているのは、娘が海に行きたがっている事と、肌身離さず小さい壺を持ち歩いている事。終盤で娘の理由および壺の中身が明らかとなるが、それは旅の道中が通過儀礼となり、大人の階段を昇った娘の成長とイコールとなる。
明らかに地球に存在する地なのに、どこかディストピアな様相を醸し出し、ロシアが舞台ということもあってかタルコフスキー作品とダブる。劇伴もなくセリフも極端に少ないドキュメンタリータッチの作風は、観る者の理解力が問われる。それが合わない人は本当に辛いかもしれない。ただハッキリ言えるのは、ロシアという広大な国だからこそ本作の制作が実現したという事だ。
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