劇場公開日 2023年12月1日

「呪われること、呪いから解き放たれること」朝がくるとむなしくなる あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5呪われること、呪いから解き放たれること

2024年2月1日
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鑑賞方法:映画館

今日、横浜のジャックアンドベティで観たのだけど、上映前になんと東出昌大の「WILL」の予告編が流れた。意図的ではなく偶然なのだろうけど、映画業界の狭さを感じた。
唐田えりかはさぞ大変だったのだろう。
就職した先がブラック企業で、消耗しきって退職し、でも国もとには戻らずそのままコンビニでバイトしながら一人暮らししている飯塚さんが主人公。パワハラ、いじめ、カスハラといった彼女を傷つける事柄が背景にある。ハラスメントはやる人を啓蒙すればなくなるというのはウソで、加害者は被害者に憎悪をぶつけ苦しめることで自らの精神的なバランスを取ろうとしている。つまり積極的にハラスメントをする事情がある。一方、ハラスメントされた側はその時だけでなく心に傷を負う。これは丑の刻まいりと同じで呪いをかけられていることになる。例えば、冒頭出てくるショートホープのおっさん。典型的なカスハラですが、飯塚さんは後々までこの件で苦しんでいる。つまり呪いをかけられた。そして社会が分断化、多様化するなかで呪いをかけられる人はますます増え、呪いのかけ方も巧妙になってきている。
被害者が頑張って前を向けばいいんだとかいうのもウソで、元々他者にかけられた呪いを加害者本人のガッツだけで祓うことはできない。
じゃあどうすればよいのか。「呪う」の反義語は「祝う」です。つまり他者にかけられた呪いは別の他者から祝ってもらうことで祓うことができる。この「祝う」はお祝いごとのことではなく、祝福されることです。つまり自分のことを思いやり、行く末が幸多かれと祈ってもらうこと。
映画に戻りますが、飯塚さんは大友さんという友達を得ること、そして疎遠にしていた母親との絆を取り戻すことで、彼女たちから祝福を受けることができました。かけられた呪いから解き放たれる見込みが見えてきた。トンネルの出口は近い。繰り返しになりますが人にかけられた呪いを人から受ける祝福で祓う、そういった構造の映画だと思います。
確かにこの映画でヒロインを演じるのは唐田えりかが適任かもしれない。映画に出てそこでの演技に共感してくれる観客を得るということは唐田さんにとって祝福を受けているっていうことに多分なるんだろうなと思います。

あんちゃん
sow_miyaさんのコメント
2024年2月3日

> 人にかけられた呪いを人から受ける祝福で祓う

目からウロコでした。この言葉、刺さりました。

sow_miya