ロー・タイドのレビュー・感想・評価
全5件を表示
軽々しく飛び越える柵
A24っぽい色調でありながらも、同社作品が陥りがちな不親切さを徹底的に回避した上質なクライムサスペンスだった。
悪ガキ4人が廃屋に眠る金貨を巡って対立を深めていく、といういたってシンプルな脚本。しかし金貨についての情報は均一ではない。金貨のありかを知る者、知らぬ者、金貨の存在にすら気がついていない者。
そして情報の不均一が憎悪や嫉妬を生み、4人の関係は周囲の人間関係まで腐食させながら急速に破綻へと向かっていく。その速度から目が離せない。
しかし一方で、会話だけで物語を進めたり、あるいは逆に説明不足に陥ったりしているところが見当たらないのがすごい。ほんの小さな(しかし印象的な)描写によって来たる展開を示唆するような巧みなショットがいくつもあった。
たとえば、レッドと呼ばれる悪ガキのドンが廃屋で銃を拾うシーン。「チェーホフの銃」の原則に従い、この銃はどこかで必ず発射されるだろうことが予期される。それによって以後の彼と仲間のやり取りが緊張を帯びる。
あるいは脚にギプスを装着している悪ガキがギプスの隙間に金貨を隠し入れるショット。おそらく後々で誰かにバレるのだろうな、という予想は見事に的中し、彼は放り込まれた留置所の中で苦い思いをする。
伏線の張り方/回収の仕方に関していえばまさにお手本のような作品だった。
その他で素晴らしいと思ったのは、主人公が遊園地で女の子を口説く一連のシークエンスだ。柵をひょいひょいと飛び越え、女の子の真隣に直立し、そのまま同じリフトに乗って空の旅へ。
下手な作家なら出来合いの口説き文句や押し問答を描いてしまいがちなところを、柵を2つ飛び越えるという端的なショットで済ませてしまう勇気とスマートさに感服した。
柵を飛び越えたということはアトラクションに無賃乗車したということでもある。礼儀も法律も軽々しく飛び越えてしまう主人公の軽快さは、確かに見ていて清々しい。そりゃナンパも成功するわな、という説得力に溢れていた。
【夏になると窃盗を繰り返していた少年たちの苦い顛末を描いた青春ドラマ。】
Swagger
犯罪系の青春映画
知恵と勇気と兄弟愛
全5件を表示