「優れた材料を活かしきれなかった残念な作品」仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦 たくむしさんの映画レビュー(感想・評価)
優れた材料を活かしきれなかった残念な作品
まずこの映画は、客が喜びそうな要素を取ってつけただけのような映画だ。有名声優とVtuber起用して、新ライダー、新フォーム出して、ついでにバイクを出して最後に感動要素を付けてはいお終い。と、テキトーに作った感じが伝わってきた。以下、そのように感じた理由を述べていく。一回しか見てないので、間違った部分があっても容赦してほしい。
■絆を感じない
本作は複数のレベル10ケミーが登場する。彼らとどう絆を結び仲間としていくのかが見所の一つだと思っていたが、新フォームのためにすごく雑に流された。エクシードファイターはナーゴの優しさで心を開いた分マシだが、他は疲れたところを狙ったり、弱そうな本体を容赦なく吸収したり、樹液を吸ったらいつの間にか仲間になったりと酷かった。「レベル10は支配してはならない」掟があるが、むしろ支配してるように見えた。なのに、終盤彼らはガッチャードに力を貸す(エクシードファイターはナーゴに心を開いたのに)。全然絆を感じられなかった。
■設定が曖昧
人をケミーにする魔法(終盤でこの設定もひっくり返るが、詳しくは後述)でバッファ、タイクーン、ナーゴはケミーに姿を変えられる。人間に戻るために、クロスウィザードの遊びに付き合うが、その最中に人間に戻れてしまった。ケミーライザーで召喚したことによるみたいだが、そもそもそんな機能があるなんて聞いてない。しかもいつの間にか戻ったり、人間とケミー化の境界が曖昧だった。
そして遊びの設定も然り。なんと4チームに分かれて5体のケミーをガッチャするのだ。この時点で破綻しており、しかも錬金術師でしか捕まえられないと言っていたはずだから、ケミー化したバッファたちを連れていく必要性をナーゴ以外は感じられなかった。てか、1個ちゃんと作ったから後はどうでもいいやとでも思ったのか?
ラスボス戦でも、人々を取り込んでパワーアップしたのはどういう理屈か分からなかった上、なぜ最初からそうしなかったのか疑問だった。あと、ギーツIXを拘束した魔法をバッファとヴァルバラドで粉砕できたところも意味不明だった。
■キャラの行動が意味不明
クロスウィザードは非常にかわいらしく、過去の経験から皆と一緒にいたいと願う姿は心打たれるものがあった。だが、その気持ちからとった行動は、宝太郎たちを彼ら自身が一緒にいたい人と共に夢に閉じ込めること。え?お前がみんなと一緒にいたいんじゃなかったの?本当に意味が分からなかった。関連して気になったのは、宝太郎の夢の人物の性格がまるで違ってたこと。錆丸たちの人格否定につながるのでは?子供向け映画でそれは悪手では?と思った。
ラスボスの目的はギーツへの復讐で、クロスウィザードにギーツ達を集めてもらってたらしい。ジャマトは彼女の魔法で何とかしたとして、どのように話を持ち掛けたのか具体的なことが不明なのがいけなかった。だから彼女が「騙したのか」と怒ってもピンとこなかった。てか、二千年も錬金術で生きてた(本当にそうなのかこれまた不明)なら、ジャマトぐらい自分でどうにかなりそうだが、なんでそうしなかったんだろう?本当に彼女を利用する必要があったのか?
■バイクシーン
爆発の中、ただ荒野を走ってただけ。何の面白みもなかった。雑魚敵を蹴散らしてほしかった。終わった瞬間、え?これだけ?と思った。
■仮面ライダーマジェード
白を基調としたデザインはよかった。登場経緯はもうちょっと頑張ってほしかった。まずラスボスの魔法に対抗するため、コズミックとファンタスティック属性のケミーの未知の力に頼るため、もう一度魔法にかかって夢の中のりんねの父親(風雅)にケミーの力の使い方を聞くというもの。まず、新しい属性がいきなり登場して困惑したし、未知の力に頼らないでほしい。ミナト先生が過去の文献から魔法には今回のケミーの力が有効だとか理由をつければスムーズに納得できた。次に夢の中に入るのだが、マルガムは離れたところにいたし、その魔法はあくまでクロスウィザードが使ったものなので、どのように実行したのか不明だった。過程がごっそり削られて本当にいつの間にか夢に入ってて、頭を抱えた。そして最後に教えを受けるのだが、りんねの夢の中の風雅が、どうして本物の彼と同じ知識を持ってると言えるのだろうか?で、具体的なことは教えないし、謎パワーでりんねの指輪は変化するし、なぜかガッチャードライバーは出現するし、それが本当に夢だとは思えなかった。ラスボスの後半戦では戦わなかったのが残念だった。一応、テレビ本編で力を使い過ぎたと説明があったが、そんな様子は見られなかったし、最後まで戦った方が説得力はあった。
■ギーツケミー
本当に納得いかない存在。英寿が過去に飼ってた犬の魂が、クロスウィザードの「人をケミーにする」魔法で狐のケミーになったのだが、もういろいろおかしい。まず、英寿が犬を飼ってたことは私の記憶にない。二千年生きてるからそんな時代があってもいいだろとも思えるが、事前に描写してほしかった。冒頭で英寿をガッツリ映しておけば…。合作映画だから、最初にギーツが出ても問題ないはずだ。そして魔法で狐のケミーになった件。人をケミーにできるなら犬の魂をケミーにできるはずなんて考えられない。まるで理屈が通ってない。しかもなんで狐なの?犬と狐は全然違うよ?イヌ科だからセーフだとでもいうの?
■スターガッチャード
劇場版フォームとして派手な見た目のてんこ盛りフォームは非常に好印象。それぞれの能力を組み合わせた戦い方もよかった。
■クロスウィザード
高橋李依がCV担当で本当に良かった。非常に愛らしいキャラとして描かれていた。むしろ彼女との絆を描いたことで、他5体のケミーの扱いが割を食った感がある。
■まとめ
この映画を料理に例えれば、火を通してない肉、土だらけの野菜、炊いてない米、封を開けてないカレールーを机に並べて「カレーです!」と言ってるようなものだ。良かった点は使った材料が高級品だったこと。上手く材料の良さを活かしきれなかったことが、残念でならない。以上、ここまで読んでくれてありがとう。