「期待度○鑑賞後の満足度○ 「ニューヨークのクソ男ダイアリー」かと思うくらいに出てくる男は主演の兄弟以外殆どクソ男ばかり。好編だが女性像がやや古臭いのが難。」ニューヨーク・オールド・アパートメント もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度○鑑賞後の満足度○ 「ニューヨークのクソ男ダイアリー」かと思うくらいに出てくる男は主演の兄弟以外殆どクソ男ばかり。好編だが女性像がやや古臭いのが難。
①予告編を観て、もっとハートウォーミングな話だと思っていたら、結構シリアスな内容だったのにはちょっと驚いた。
②クリスティーンがクソ男を47回刺した気持ちはよく分かる。クリスティーンが心から血を流したのは47回どころではないだろうから。
ただ、恋人を刑務所から出すために街娼までしてお金を作ったのに裏切られた(というか利用されていた)のを知ってそのクソ男を殺すというメロドラマみたいな筋立ては最早使い古されたというか大時代的というか。
勿論、現代でも世界中にその様な女性(自分にで望むか望まざるにせよ)は沢山いるだろうし普遍的なこと(でも、そんなことを言うのは女性に対して失礼ではなかろうか)かも知れないけれども、せめて現代の映画の中ではその様なステレオタイプから女性を解放してあげるか、別の描きかたをするべきではないだろうか。
あと、初恋の相手だったり、初体験させてくれた女性が複雑な事情の持ち主で、離れざるを得なかったけれども、少年達の心には美しい人として、或いは美しい思い出として残る、という話も何処かで観たか読んだかした既視感あり。
また、お母さんにしても、“恋なんて卒業よ”みたいなことを息子達には言っておきながら、言い寄ってきた男(本性は息子達は見抜いていたけれども)を好きになった途端「恋は盲目」(ジャニス・イアンだぜ)になってしまうのも手垢の付いた展開。
③あっさり強制送還されてしまったのは仕方ないにしても、生肉を乗せたコンテナに隠れて不法入国したというシリアスさ(私ではとても耐えられそうにない)に反して、ペルーでの描写はそこまでして不法入国したいような国・環境に見えなかったし、“必ず戻るから”と軽く言ってたけれども、トランプがまた大統領になったら無理でしょう。
④良い映画なんだけれども、ちょっと中途半端な印象は拭えない。
「僕たちはこの街では透明人間なんだ」と言っていた冒頭、「もう透明人間ではいたくない」と叫んだ中盤、でも後半では「透明人間」のテーマは何処かへ行ってしまって、あのシリアスさは何だったの?という感じ。
いっそ、もっとシリアスな方か、もっとコメディタッチの方か、振り切った方が良かった様に思う。
⑤邦題が『ニューヨーク・オールド・アパートメント』という芸のなさ+内容を表していない。
まさか原題も?と心配していたら、『The Saint of the Impossible』(“不可能を可能にしてくれる聖人”くらいの意味かしら?)が原題。
こちらなら納得。
⑥オーディションで選ばれたという主演の男の子二人も好演だが、母親役のマガリ・ソルエルが、どうしようもなく“女”の部分を持ち併せながらも大変子供想いの母親であるラファエルと言う女性像を非常な好演。
ラスト、不法入国先ではあってもアメリカで自立して生きていこうという姿も清々しくて宜しい。