「面白さと矛盾と」罪と悪 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
面白さと矛盾と
2024年の作品
脚本がオリジナルとなっている。
さて、
この作品の中にある「問題」
そのいくつか、または全部が解決されないと解する事もできる。
最後の夏祭りのシーン
3人はこの場所で会う約束をしたのだろう。
しかしその直前に、直哉の自殺を、春と晃は考え抜いて答えを出した。
直哉の引きこもりは、高校卒業後に始まったようだが、その理由を一番理解すべきはずの朔
この伏線は良かった。
最も謎めきつつ自然で、朔の策略を感じる。
二人の父は、なんとなくでも直哉の引きこもってしまった理由を知っていたのだろう。
だから、当時の同級生たちに対して非常に用心深くなっている。
ここにも伏線が貼られていた。
そして何よりも、事件の渦中にいたものだからこそわかることがあるのだろう。
それを警察の捜査と対照的に描いているのもなかなか良くできていた。
引きこもりになった直哉だが、実際には朔に監禁状態にさせられていたと考えることができる。
窓から晃に手を振るが、朔と目があった途端、窓から離れた。
警察官となった晃の違和感
そして、
「何故、小林少年が正樹と同じ格好で死んでいたのか?」
この出来事は当時の事件を蘇らせ、晃の心を激しく揺さぶった。
罪悪感
直哉が20年間感じ続けていたそれは、全く別の事件を引き起こした。
さて、
プロットとして、ここが非常に悩ましく感じられる。
引きこもりの直哉が、春と白山会人の揉め事を知っても、小林にたどり着くことも、発見して殺害することも難しい。
直哉が朔によって幽閉状態にあったなら、直哉は朔を殺して同じように川に遺棄するほうが容易い。
朔に対し、そんな事はできないと考える場合、そもそも赤の他人である小林少年を殺害することなど不可能だ。
そして正樹の財布
これは明らかに「メッセージ」だ。
しかし、それがメッセージだとわかるためには、春と晃はもう一つ山を超える必要があった。
作中描かれないそれこそ、この物語の隠し扉。
そして、問題の一つの白山会との揉め事は、まるで消えたかのように本筋から離れてしまう。
これは「良し」だ。
春にとっての最大の問題は、佐藤や警察、白山会よりも「正樹の事件」だった。
当時心の底から信じていた仲間
しかし、誰にも言えなかった「出来事」によって、正樹と朔は激しく対立した。
そしてそこにあるもう一つの悩ましさ
それは、あの「おんさん」と言う人物の正体だった。
少年たちの会話は聞き取りにくく、焦点を絞られているにも関わらず「おんさん」については非常に曖昧だ。
あの小屋はおんさんの家であるが、正樹の自宅だと思ってしまう。
この点は明確にすべき場所で、脚本と映像に注文を入れたくなる。
さて、、
おんさんの小屋で発見した正樹のスパイク
これは間違いなく「朔」がした偽証。
朔の一撃は正樹のための一撃ではなく、復習のための一撃。
そしてこの場所に直哉はいなかった。
直哉は、誤って死んでしまった正樹の遺体を川に捨てた手伝いをさせられ、アバンタイトルのサッカーの試合でも正樹の姿はよくわからない。
背番号10の春と、3の晃 この二人の印象しかない。
「俺達は正義だったのか?」
この春の問いかけは、春自身の人生を棒に振ってまで助けようと思った仲間の、純粋な思いと対等だったのかと言う疑問を生じさせた。
その結果が、あの夏祭りのあと 仕組んだ交通事故として落とし前をつけられた。
この落とし前のことまでは、晃は感知できなかった。
ここが春との違い。
そして、正樹の事件と財布の謎が解き明かされた。
当時晃は、正樹の忘れ物の財布を直哉に頼んだ。
直哉は正樹にそれを届けに行く途中、朔の前で横たわる正樹を見た。
その財布は20年経ってようやく「メッセージ」となった。
なかなか良くできた物語だったが、やはり、直哉が小林少年を殺すという設定には無理があったように思う。
それをセリフという言葉でやり過ごしたが、現実味がなかった。
そこだけが惜しかった。

