「「それはあなたの想像ですよね」を神様視点で彼らの妄想にしても良いものだろうか」罪と悪 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
「それはあなたの想像ですよね」を神様視点で彼らの妄想にしても良いものだろうか
2024.2.8 アップリンク京都
2024年の日本映画(115分、PG12)
高校時代の親友がある事件を機に過去と向き合う様子を描いたクライムミステリー
監督&脚本は斎藤勇起
物語の舞台は、日本の地方都市(ロケ地は福井県福井市)
サッカー部に所属する阪本春(高良健吾、青春期:坂元愛登)、𠮷田晃(大東駿介、青春期:田代輝)、朝倉朔(石田卓也、青春期:柴崎楓雅)、木田直樹(石崎柊斗)は大の仲良しで、終始行動をともにしていた
朔には兄・直哉(坂口辰平、青春期:深澤幸也)がいて、彼もサッカー部に所属してゴールキーパーをしていた
そんなある日、正樹が川で死んでいるのが見つかってしまう
春は「おんさん(大槻ヒロユキ)」と呼ばれる河川敷に住むジジイが犯人だと決めつけ、晃と朔を連れて、その小屋へと向かった
そこには正樹の血のついた靴があり、逆上した彼らは、男をボッコボコにしてしまう
さらに朔は、その辺に転がっていたスコップを拾い、それで男を殴り殺してしまう
春は二人を先に返し、小屋に火を放って、一人罪を被ることになった
それから20年後、3人は再会を果たすこともなく、それぞれの職業に就いていた
春は地元の悪ガキを保護する半グレのような状態になり、晃は父(蔵原健)と同じ警察への道へと進む
朔は父(久保耐吉)の農業の手伝いをして、直哉はいつからか部屋に引き篭もるようになっていた
春は小さな売店と土建屋を営んでいて、街の厄介な仕事を引き受ける何でも屋の顔を持っていた
そんな彼の元に「ヤクザの店で暴れて逃げた少年」を探している、地元の白山會・清水組の組長・志水(村上淳)とその手下の村田(成田瑛基)がやってくる
「情報は渡すが引渡しはしない」という条件のもと、春は少年の情報を伝えるものの、一向に捕まる気配がなく、再度清水は脅しをかけてきた
そんな折、清水が探していた少年・小林(本田旬)の死体が、正樹が殺されたのと同じ場所で発見される
そして、小林の殺人及び死体遺棄の捜査に晃がつくことになった
彼は最近地元に戻ったばかりで、春との再会に因縁めいたものを感じる
だが、二人は立場上相入れることはなく、それぞれの方法で犯人を追うことになる
20年前の事件に関しても、もしかしたら他に犯人がいて、彼らの殺人は間違いだった可能性も出てきてしまうのである
映画は、現在進行形の事件と20年前がリンクする形になっているが、実際には全く関係のない事件で、少年時代の因縁が再燃する形となっている
言わば、偶然の一致が起こした「過去の清算」であり、それが晃の帰省とともに起こっていると言える
晃は「20年の間に変わってしまった地元」という異世界に入った存在で、その世界の問題を解決する役割を担う「異世界招聘もの」に近い印象がある
ただし、晃自身もその異世界の問題の一端を担っていて、それが父から流れを汲む現地を統括する刑事・佐藤(椎名桔平)の存在だった
晃自身は現地の問題を解決するというよりは、父のあとに肥大化した街の暗部と向き合うことになっていて、これによって「罪と悪の関係性」を突きつけられることになるという構図になっている
結局のところ、過去の犯人は誰かという流れがあり、それが推定有罪のような形で後始末がつけられるのだが、これがこの街の流儀ということになる
この流儀に晃は反発するのかはわからないが、佐藤が引いている防衛線に関しては抗うという姿勢を見せている、という感じになっていた
いずれにせよ、役者の演技を堪能するには良いが、絡むと思われる事件が無関係だったり、真犯人の「お前らの想像だろ」から抜け出せていないのに致してしまうのはどうかと思う
彼は何一つ自白などしておらず、あの時に起こった本当のことは晃と春の脳内妄想でもない
あの過失(実際には殺人ではない)だと罪になることもないので、あの石を持ち去ったことと川に遺棄したことで彼を断定する何かが付着してしまっている(兄は共犯となっている)
それを踏まえると、穴だらけのシナリオになってしまっていて、天の声だけが知っている真実を「決して知り得ない彼らの妄想」にしてしまうのはナンセンスではないだろうか