あんのことのレビュー・感想・評価
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蜘蛛の糸を這い上がれ無かったあん
こう言う作品、今迄数限りなく観てきましたが、どの作品も、最後は何かしかの救いが有りましたが、この作品、私には全く有りませんでした。初めてです。敢えて言えば、主人公の母親が、泣いてる子を追い出すのに、役所を使ったのが、主人公には救いを感じたかも知れませんね。佐藤二朗さん、初めてです、この佐藤二朗さんを観たのは。圧巻でした。
「蘇り彼女が残した物」生まれ死ぬまで何も無い、そして墓も無い
ギャンググースなど手掛けた入江悠監督作品
主演は河合優実、パワフルな演技の刑事役の佐藤次郎、「十二人の刺客2010」で悪役で好演だった稲垣吾郎が記者役として脇を固めます。実話が元で作られた作品で
小4で不登校、12歳で体を売りシャブの中毒で売人でもある21歳のあんの生涯を描いた作品。
生い立ちが不幸な主人公のあん演じる河合優実は腕にシャブの跡だらけ、目に大きなくまを作り痛々しいですが、そこにエネルギッシュな佐藤次郎が加わり、稲垣吾郎がカラオケでブルーハーツの情熱の薔薇を歌ったり、ハモリを入れたりとさり気ない歌手らしい演技もあり一瞬、作品に希望の光が差しますがこれが現実と言わんばかりに冒頭から終わりまで状況は変わりません。この作品にハッピーエンド、バットエンドなど存在せず、現実を描いたまでと思いました。
作中、あんが祖母にケーキを買って来たり、多々羅に手紙で感謝を告げるシーン、そして最後の墓は無いの一言は心に残り涙し、生きている者は真面目に強く生きなくてはと言うメッセージにも思えました。入江監督は「ギャングース」でも不幸な主人公達を描いており、今回の稲垣吾郎の様に「アンブロークン」のMIYABI、般若とアーティストも起用していてギター演奏もラップも無しでちゃんと俳優として扱うのが素晴らしいと思います。「ギャングース」は報われる所謂、ハッピーエンドですが幼児虐待、高齢化社会など日本の闇もしっかりと描写に入れています。「あんのこと」と「ギャングース」では真逆の結末ですが何れも日本の現実を捉え、力強い作品が多く大好きな監督です。
商業的な映画が多い中、「あんのこと」の様に
ちゃんとお金を払いたい映画が増えたらと心から願います。
物語~結末
映画開始早々に誰も居ない薄暗い街を虚ろな表情で歩く主人公のあん。
既に幸せな結末にはならない予感が伝わり、シャブの中毒であり売人である事が描かれ
家に帰ると足の踏み場も無いゴミ部屋に売人で得た金を強請る母親、足の不自由な祖母。
父親は見当たらず、冒頭の予感が絶望と言う確信に変わる。そんなあんは、逮捕される事を機に佐藤次郎演じる刑事、多々羅に出会う。リストカットを即座に見抜く鋭い洞察力を持ちながら取調室で呪文を唱え、机の上でヨガを始める奇想天外な刑事の行動にあんはお手あげ。股間を探りコンドームに入った白い粉を差し出す。煙草は吸わないあんに対し「煙草位吸っておけ!バカヤロー」と浴びせると
この人もシャブ中なの?と思う位にぶっ飛んだ行動る反面、生活保護申請など真摯にサポートする姿にあんは徐々に心を開き、刑事主催の更生セミナーに通う。その後、刑事の紹介で介護施設に働く事になるがこれはあんが将来、祖母を介護したい意向による事だった。
早々に施設ではわざと、飲み物をこぼす老人(老害)も登場し老人介護の闇も描かれ。
そう簡単に上手に進まないと思いきや、足の不自由な祖母の面倒に慣れているあんは、何も気にせず仕事をこなす。
初給料を貰い(真っ当な)日記と祖母にケーキを買う。セミナーで多田羅がシャブを使用しない日の日記に〇をつけろと言う言葉に従うが日記は平仮名ばかりだ。同様に祖母にケーキを買って帰る健気なシーンは心を打たれますが、それを早々に酔っ払い、男を連れた母親が破壊し初給料も奪われてしまいそうになる。ハンカチに赤い血。
あんは家を出て自立する覚悟を固める。
給料の不当な扱いからあんは、セミナーに取材に来る桐野の紹介で違う介護施設に移る。
給料を強請りに母親が職場に乱入する事もありながら施設の人々は追い出す事はなかった。
あんを暖かく迎える職場、新しい住まい、セミナー以外にも新たなに学校に通う。全く新しい生活に生きる喜びを得たあん。
セミナーで手紙を読むシーンは小学生で食べる為に万引きを繰り返し不登校。12歳で母親の強要で売春と不幸な生い立ちを告白しながら多田羅に感謝を伝える姿は目頭が熱くなります。
セミナーに通う人達を取材すると言う記者、稲垣五郎演じる桐野はあんに接近する。(実際は多田羅の不正行為のリークがあった為に通っていた)記事にする為と言うより、純粋に多々羅とあんに惹かれた様子で三人で過ごす描写が多くあります。桐野は取材を続けセミナーに通っていた女性から多々羅に性的要求されたと言う情報が入る。多々羅の行動を良く思わない施設の人間、刑事もおり早々に多々羅は逮捕される事になる。ショックを隠せないあんに、今度はコロナの猛威が襲う。
信頼していた、多田羅の逮捕。(親友)
逮捕によるセミナーの廃止。(同じ境遇の仲間)
コロナによる出勤停止。(金)
通学していた学校の休校。(学)
ボクシングで言うならば井上尚弥の本気パンチを4発連続で顔面で受ける。過去も不幸なだけにヘビー級ボクサーのパンチレベルかもしれない。
何れにせよ、普通の人では一発だけでも立ち上がる事は困難で最悪死に至るレベルだ。
追い打ちは終わらず今度は突然、アパートの住民に子供を預かってほしいと強引に子供を渡され逃げられてしまう。(あんは前夜にその母親の怒鳴り声と子供の声で寝れなかった)
もはや、極限状態で引き金を引いた銃やピンが抜かれた手榴弾を手渡された状態だ。
あんは仕方なく子供の世話をはじめ、子供の食事のアレルギーなど日記にメモを残していく。実の家族の様に子供と生活をする様になった所で偶然、あんの母親と遭遇してしまう。
「祖母がコロナにかかったかも知れない」と言う言葉に釣られ家に戻ると祖母は元気で、嘘をつかれた事に気が付いたあんは逃げようとする。
しかし、母親に子供を人質に取られ体を売って金を稼いで来いと要求され、あんはそれに従う。
あんは体を売り得た金を握り、母親に子供を返す様に要求する。
母親は子供が面倒だったから市役所に引き取って貰ったと告げる。あんは怒り、包丁を手にするが母親の圧力に負け、家を後にし再び覚醒剤に手を出してしまう。
目覚めたあんは、◯を付けてきた日記に目が止まる。再び覚醒剤を打ってしまった事、多々羅に対するやるせない気持ち、我が子の様に育てた子供を奪われ、何をしても上手く行かない人生の嫌気、衝動で日記を燃やそうとする。途中で慌てて火を消して焼け残ったメモを見つめ泣き崩れる。
窓の外を見上げると、コロナと闘う医療従事者をはじめとする多くの人々に、敬意と感謝を示すためのブルーインパルスの飛行が目に入る。
青空に不死鳥を意味するスモークが残っていた。
しかし、あんにはその意味も分からず、
分かっていたとしても理解する余力は残って居なかった。
導かられる様に窓を開けてベランダへ向かう。
そして、あんは再び覚悟を決める。
終盤、あんに子供を預けた母親が子供を市役所に引き取りに来る。母親は職員からあんが亡くなった事を告げられメモが渡される、メモはあんが子供の為にアレルギーなど書き残した物だった。
母親はあんにお礼が言いたいと
墓の場所を尋ねるが職員は
「母親が遺骨を取りに来たが、墓は無いでしょくね」と告げられる。
生まれてから殆ど良い事も無く、何か進んでもそれを覆す不幸な毎日、そして墓も無い。
このシーンは見ていて重い石がすっと体から落ちた感覚になり言葉を失いました。
映画は引き取られた子供とその母親の後ろ姿で幕をとじる。
スクリーンに蘇った彼女が残した物。
預けられた子供を救った事も勿論、
この作品を見て子育て、仕事、私生活と個人で刺さるポイントは違えど真っ当に生きなくてはと言う気持ちになった人は多いだろう。
真っ当な人間が増えればあんも、あんに預けられた子供の様な事は減る訳ですから。
この映画であんの様な子が一人でも減れば、報われると思います。
只、悲しい、可哀想と言う感想だけの人が多いのは
個人的にも残念で、監督や作品も亡くなったあんも
わざわざスクリーンで蘇らせてまたその一言で終わられてしまうのは報われないと思います。
悪い意味では無く日本が平和な証拠。
環境
入江悠監督作品は初めて見ました。
この作品は事実を基にしているとの事、胸が痛むひどい話でしたが、映画にする意義は大きいと思いました。
あんという女性がいた事、彼女のような人たちがまだまだいるであろう事。
毒親・鬼畜母(または父)を映画で見る度、病気だなと思います。まともじゃない。娘への愛情など微塵もなく、あるのは執着心と支配欲だけ。育つ過程に何があったのか、負の連鎖?おばあちゃんは優しい人なのに。この母逮捕されりゃいいのにと本気で思いました。
シェルターで隣のシングルマザーからあんな風に子どもを押し付けられるなんてそれも驚き。この母親も男とトラブルって…最後「あんちゃんありがとう」ってさー(`´) 日記帳の切れ端見て悟ったとかそれは分かったのですが、びっくりしました。
手を差しのべてくれた多田羅刑事も、聖人君子ではなかった。でも行動によってあんの人生が変わっていこうとする事は唯一良かった点ではないかと思います。皮肉にも押し付けられた子どものお世話に懸命になり、老人ホームのおじいさんからも慕われた、あんの最後が残念でなりません。
俳優の皆さん素晴らしかった。
河合さんは脇役でちょいちょい拝見してましたが、実力派。すごくいいですよね。今年、一気にきましたね。今後も楽しみ。
佐藤二朗さんは「変な家」を見た後だけに、余計良かったです。
善と悪と正義と
心の深奥に刺さる映画である。
DV、貧困、無知、売春、覚せい剤、打算とこの世に蔓延する悪の中に、杏という弱々しい
無償の善の持ち主を放り込み、「悪に翻弄される善」という普遍的なテーマを展開する。
ここまでなら良くある構図だが、監督が秀逸なのは、そこに多々羅という極端な善悪両面を備えた刑事と、正義を標榜する新聞社の記者を据えたことである。かくして善悪だけでは割り切れない複雑な構造を映画にもたらすことに成功した。その結果、降りしきる雨の中で杏を抱きしめる多々羅刑事の姿は、善悪を超えた崇高さを持ち、一方で正義の遂行(新聞による告発、児童相談所による幼児の確保)が杏にとどめを刺す、という胸をかきしめられるような展開を描き出した。
登場人物の中で杏だけが、ただ他人の為に生きた。燃え残った日記の一片には、子供のアレルギーや好き嫌いに配慮した食事が記されており、それは善の塊であり、杏の生きてきた証であり、墓標である。
幕が閉じた時、監督からの問いかけに気づく。お前は誰だ。杏か毒親か新聞記者か刑事か。「いえ私はただの観客です。杏はかわいそうでした。行政はもっとしっかりすべきです。」といつもの日常に戻るのは簡単だが。
杏に出会ってしまったからには、日記の続きを託されたと観念すべきであろう。
河合優実、河井青葉、佐藤二朗の演技は圧巻である。
杏ちゃん
私は脚本も書ける監督さんをとても尊敬しているのだ。
本作も入江悠監督が脚本も手がけている作品なのだが、代表作?のラッパーシリーズは未見。
「太陽」と「22年目の告白 私が殺人犯です」しか知らないので、どんなテイストの作風の監督なのか?
いまいちわかっておりませんm(__)m
本作は河合優実ちゃんが主演というだけでチェックしていたもので、いつもなら気になる監督すら確認しないまま鑑賞。
キービジュアルは見ていたが、事前情報ほぼゼロです。
最初に「実話ベース」とのテロップが出る。個人的に苦手な演出。
どこまでフィクションで、ノンフィクションなのか気になってしまうし、第一印象に影響が出るから。
でも、本作では有効だったと思った。
キノシネマのリクライニングできるゆったりした座席に腰を下ろし鑑賞している自分。
冒頭で映し出された杏ちゃんの顔のアップ。
目の下のひどいクマ。正気を失った表情が映し出された時、
「あ、、どうしよう」と動悸がしてきて、、、でも覚悟が決まった。
目を逸らしてはいけない。
実話ベースの悲惨な事件であることは間違いない。
杏ちゃんを救えなかった日本の現状。
だけど、この闇や大人達に怒りの感情を向けるだけではダメなのではないか。
断罪する事にこだわっている様ではこれからも変わらない。
まだ日本のどこかに存在しているであろう第二、第三の杏ちゃんは救えない。
この絶望的な世界に身を置く子供達を、取りこぼしたままでいる日本を変えなくては!と、強く思うものの、では、自分に何が出来るのか?と、問うてみても、無力過ぎて落ち込むのだ。
日々流れて来る似たような事件を目にするたびに、心が痛み、憤りを感じ、大きなため息が出るだけだ。
(身近な所だと新宿のトー横とかか)
だから考える。考える事を止めてはダメだ。
今の私にも出来る事。
自分の周りの人には優しくいたい。
バカみたいな言葉しか出てこないけど、何かあったらあの人に!って頭に浮かぶ人間になりたい。
(あと選挙行く)
杏ちゃん。
あなたの頑張っていた人生を少しだけど、見せてもらったよ。
知らなくてごめんね。
助けてあげられなくてごめんね。
動のさとみ、静の優実。
主演女優賞はさとみなんだろ〜けど、私は優実ちゃんを推したい!
◎追記◎
タタラのモデルになった刑事に裏の顔があった事も実話に基づいていると知りました。
言葉が出ません。
河合優実の説得力
河合優実の演技が、演技に見えない説得力。実話に基づく物語ですが、ドキュメンタリー以上にリアルな感触を与える、すごい女優さんが出てきたな、という印象です。佐藤二郎が絶賛する理由がよく分かる。
理不尽な家庭環境から絶望さえ知らなかった少女が、ほんの少し希望を与えられ、少しずつ人生を立て直していけるか…と思ったらまた理不尽に奪われ、突き落とされる。トーヨコにいる少女達も多かれ少なかれ、こういった背景を抱えているのだろうと想像できて、苦しくなります。
大人が大人の責任を果たさないことのツケを、子ども達が払わされている理不尽。観て、我々大人達が反省し、次の行動につなげなきゃいけない作品です。
河合優実推しですが
愛なのにを観てから河合優実を推している。NHKドラマの家族だから愛したのではなく愛したのが家族だったや、不適切にもほどがあるも面白かった。
本作では河合優実の魅力が発揮されていたが、佐藤二朗と稲垣吾郎は今一つ。佐藤ではなく岡部たかしの方が二面性が出るし、稲垣ではなく北村有起哉の方がジャーナリスト感が出たのではないか。ドラマ化されるのであれば、ぜひこのキャストで。
実際の事件を元にして作られているというが、どこまで同じなのか知らない。ただ、PG12ということからも、描き方が中途半端な感じがした。
コロナ禍の影響はあまり関係なく、母親はコロナ前でも家庭に満足に金を入れずに自分のために使い、祖母の介助も杏にやらせていたのだろう。後半で男の子の世話をするが、祖母や母親のために生きることが杏にとっての生きる意味だったのか。ただ、自死をするまでの流れは、脚本がやや甘かったと思う。
杏のような子供は、程度の差はあっても多く存在するのではないか。
期待を裏切らない河合優美
想像力や思いやりの欠如がもたらした悲劇を描いた作品。
馬鹿な大人たちの犠牲になった少女が憐れ過ぎる。
冒頭からデイパックを背負って早朝の赤羽のOK横丁を一人歩く河合優美(杏)。
佐藤二朗の多々羅。こんなイイ刑事いるかぁ?とは思いつつも、稲垣吾郎を含めて3人で杏の就職を祝ってカウンターで乾杯したり、カラオケするシーンに幸せを感じて、もう何年も足を向けないようにしているOK横丁に寄りたくて仕方がなかった。
サルベージ赤羽紹介してもらおうか😅
ロケ地は赤羽台団地や埼京線沿線武蔵浦和あたりのマンションか。
なんでブルーインパルスが飛んでるシーン入れた?
インパルス堤下を連想しちゃった。
クスリつながり?
KEYUCAで絶対可愛い手帳を万引きすると思ったのに、すんでのところで思いとどまる。多々羅へのお礼のプレゼントを買う。細かなこころの変化を演じる河合優美。
佐藤二朗も好演。
「さがす」での伊東蒼との佐藤二朗もよかった。確実に進歩してる😎好感度あげた。
どうにも薄っぺらい正義やうわべだけのマニュアル対応に苛つく多々羅。介護施設のおじさんの対応は神。元ヤンキーって言ってたな。
ゴミ屋敷はちょっとやり過ぎ。生活保護もらってないのに、缶酎ハイやビールの空き缶が多すぎ。結構リッチじゃんと思ってしまった。
あんな境遇にもかかわらず、母性に目覚めたあんちゃん。ジャガイモの皮を剥かないで賽の目に切るところなんか泣かせる。
杏の母親は酷すぎる! 馬鹿すぎる。
よく我慢していたというか、あんちゃんはいい子過ぎる。元ヤンにみえる河合優美は実はお医者さんちのお嬢さんなんで、そこはかとない品を感じる。
鈍いオイラだって、燃やしかけた手帳から切り取ったページが育児期間のものだってわかる。
杏
幾つか河合優美さんの作品を視聴してきたが
あの映像を観た時、彼女は正にあんだった。
不思議なリアルさを感じた。
貧困家族、虐待、暴力、売春、覚醒剤、コロナ
非正規雇用。
地獄のような道を辿ってきたが更正しようとする
杏。
産まれた時は皆同じ。
ただ、環境や育て方や周りにいる大人達の
影響は有り得る。
最初から悪い人はいないし、そんな事は
誰も望んでないが現実には限界もある……。
新しい部屋を見て入った瞬間のあんの表情や
ラーメン屋さんのでの食べる姿が印象的。
少しずつ人間らしく生きたいと思い始めたのに。
言葉が出ない。この過酷な社会のシステム。
本当にこのような方は存在していたの
だろうと思わせた河合優美さんの演技は
凄かったし重みも感じた。
しんどいけど観ておくべき作品。
主人公以外の配役が微妙でした
主人公の杏役の河合優実さんは圧巻の一言。
ただ刑事役佐藤二朗さんは正直役柄に合ってないと思いました。良い人の役はしっくりくるのですが、この映画でのクズ役は疑問。決して嫌いな俳優さんではないだけにもったいない感じがしました。
佐藤二郎が人情味あふれる刑事…本当か?…うそだろ!?
「不適切にもほどがある」で好演していた河合優実が主演ということに惹かれ鑑賞してきました。
母親から暴力を振るわれ、身体を売って金を稼ぐよう言われ、麻薬中毒にもなり、そんなどん底人生だった杏が人情味あふれる刑事多々羅(佐藤二朗)と出会い、彼と友人のジャーナリスト桐野(稲垣吾郎)の助けを得て更生の道を歩み始めるのだが、世間ではコロナウイルスが流行し始め仕事も学校もなくなってしまう。母と祖母のいる家を出て一人暮らしを始めていたのに不運なことから母に居所がバレ、再び暴力を振るわれ売春して金を稼いでこいと言われ…
(感想)
・佐藤二朗の人情味あふれる刑事、ちょっと強引で昭和の刑事みたいだけど、親身になって杏を更生させようとしているように見えたのに、まさかの展開に呆然
・NHKドラマ「ひきこもり先生」みたいに杏の頼れる存在だと思ってたのにさすが佐藤二朗、ゲスい役はお手のものでしたね。見事に裏切られました。
・桐野もネタのために多々羅に近づいてたのですね、稲垣吾郎が演じるくらいだからクリーンだと思ってたのに…残念
・せっかく更生の道を歩き始めてた杏の道が突然すべて閉ざされてしまう過酷な運命に同情を禁じ得ない。
河合優実の熱演が光る映画であった、と同時に佐藤二朗の演技もこの映画の魅力になっているのは確かである。
悲しいストーリーではあるが。
脚本がかなり雑。
思いつくまま書きます。
あの記者はなぜ投身自殺したときだけ現れるのか?シェルターを紹介したのは刑事と記者なのだから、子供を無理やり預けられたときや、母親に騙されて自宅に戻ったときはなぜ駆けつけたり世話を焼いたりしないのか?自宅の場所だって知ってるはずなのに連れ戻しにも行かないし。これ以上ないくらいに不自然。
あと無理やり預けられた子供にあんなに愛情が湧くだろうか?
母親も介護施設で明らかに暴力を振るっているのになんのお咎めもないのだろうか?
あんなだらしない生活してるのにいつまでも公団に住み続けることができているのもものすごく不自然。
だらしない生活、娘に体売らせてますけど家賃だけはきちんと払い続けてます?ムリあるでしょ、それは。
あとは子供を無理やり預けた母親の態度があまりにもあっさりし過ぎ。
あそこまで面倒見てもらってんだから絶対墓参り行くだろう。母親が教えなかったら胸ぐら掴んででも墓の場所聞き出すだろ?
で、預かった子供が児相に連れて行かれたくらいでやけになってまたヤクに手なんか出すか?児相に連れて行かれた「だけ」だぞ?死んだわけじゃないんだぞ?しかも児相に子供を引き渡した母親に対して怒りをぶちまけるわけでもないし。これもあり得ないくらいに不自然。
ランナウェイ
薄暗い廊下を手をつないで母子が歩き去るラストシーン。一旦陽が射してすぐに暗がりに戻るがそこで抱きあげる。親とはこうであって欲しいという制作者の願いだろう。
毒親が元凶なのは誰の目にも明らかだが、とどめを刺したメディアを、桐野に「懺悔」させる事で免罪していいのか?彼らはあの投身すら詳報して更なる部数稼ぎに精を出すだろう。
法律の想定外の窮地を役所は救えないが、救えるよう法整備して網を拡げるとそれを悪用して甘い汁を吸う輩が群がってくる。また、多々羅に象徴されるように法を執行する者も善人ではあっても聖人ではない(あのシャブ女と連れの男にハメられた)。民間ボランティアも限界がある。この袋小路から抜け出すのに必要なものは善意なんかではない事だけは確かだろう。可哀想だから助けてあげる、では助けにならないと胆に銘じたい。
私見だが、河合優実は杉咲花と並ぶ令和の大女優。
とても暗い
シャブ中で売春をしている未成年の女の子が更生していく。家庭環境がひどすぎてつらい。お母さんがひどいのだけど、ひどい面しか描かれておらず若干紋切型に感じる。あそこまでひどいと社会生活を営めないのではないだろうか。少しはいい面もないと、おばあさんなんて生きていないはずだ。おばあさんは動くこともできなくてただじっと耐えるだけの人生で主人公以上に地獄だ。とっくに福祉のお世話になっているレベルで、そういったシステムに縁がない人たちなのかと思ったら赤ん坊を即、児相に連れて行ってもらう。
あんの鉛筆の持ち方が変なところなど、とても細やかな演出だ。団地の荒れっぷりがすごい。ゴミ屋敷だ。それなのに靴はたくさんあってそんなところもリアルでぞっとする。
あんが少しずつ更生して介護の仕事に就いておじいさんのお世話をするまでになる様子に感動する。稲垣吾郎もとてもいい。
まさかの里親展開で、子どものお世話が生きていく希望になるのは、そうだそうだと強く思う。それなのに子どもを取り上げられたら、そりゃあ生きていられない。気の毒でやりきれない。
ドリルが進んでいたのに…
なんともやるせない。
あん以外の、ほとんどの人物が嫌いでした。
いちばん嫌いなのは、母親ですが、祖母にも腹が立ちました。まだ65歳なら、あんと、家を出て二人で暮らせばいいのに。シャキッとしろよ‼️と、怒鳴りつけたくなりました。
あの家のゴミを全部捨てたかった。
多々羅にも腹が立ちますが、給与明細を自宅に送って、あんの居場所を母親にバラしておきながら、対して謝りもしない介護施設の所長にも腹が立ちました。
せっかく夜間中学に入って、勉強を頑張っていたのに。
神様はいないのか。
実話を基にした作品がこんなに救いがないのなら、やっぱり、私は、後味の良いように作られている作り話ばかり観てきているのかもしれない、と思いました。
あんの記事も、泣きながら読んで終わりにしている私も、彼女を見殺しにしている一人なのでしょう。
何ができる?
何をするべき?
答えはすぐには出ない、一生、出ないかもしれない。
でも、あんが生きていたことは、ずっと忘れないでいよう、と、心に誓いました。
上手くいっていたことが一つ崩れると
しばらく出番の少ない作品ばかりだった河合優実さんの(個人的に)待望の単独主演。
だが、重い。
予告編でやんごとなき内容なのは分かっていたし、河合さん迫真の名演技だったけど、思ってた以上に重い。
河合さん主演てことで、実話ベースってこと以外の予備知識なかったから、多々羅さんがタバコポイ捨てしたり、道に唾吐いたりするのを見て、けっこう前の話なのかと思ったら、わりと最近なのか。
確かにリスカなんて現代の言葉だよなぁ。
観ていて辛くなるような出来事ばかりで、なんで彼女だけなのかと怒りのようなものが込み上げてくる。
母親が元凶なのは確かなのだけど、必死に現状を変えようと頑張っているのに、次々と周りの大人にぶち壊され、心の拠り所を失っていく杏に胸が痛い。
コロナ禍がなければ、介護施設と学校が救いになったかもしれないのに。
じいちゃんの車椅子アタックが、杏の更生を物語っていたような気がする。
積み上げてきたものを自ら壊してしまった日記の最後の◯が、なんとも悲しい。
河合さん主演というだけでなく、きっとまた観てしまいそう。
コーヒー買ったけど一口も飲めず、終映後に一気飲み。
やるせない怒りと悲しみ
売春や麻薬の常習犯である21歳の香川杏は、母親と祖母と3人でゴミ屋敷で暮らしていた。子どもの頃から母親に虐待され続けた彼女は、小学4年生から学校に行けなくなり、母親から強要され12歳から体を売って金を家に入れていた。刑事・多々羅に捕まったことをきっかけに更生しようとした杏は、多々羅やジャーナリスト・桐野の助けを借りながら、介護の仕事を始め、母親から離れるため新たな住まいでの更生生活を始めた。しかし、突然のコロナ禍で仕事が無くなり、そして多々羅の逮捕、毒親に見つかり・・・杏はどうなる、という話。
実話に基づく作品とのことで、衝撃を受けた。
沖縄の貧困問題を描いた、花瀬琴音主演の「遠いところ」を連想してしまい、やるせない怒りと悲しみが湧いてきた。
杏役の河合優実目当てでの鑑賞だったが、彼女は期待どおり素晴らしかった。母親役の河井青葉も狂気の毒親ぶりが素晴らしかった。
多々羅役の佐藤二郎は良い人だと思ってたのに、うーん、ちょっとガッカリかな。
これも日本の現状。自分が何も出来ない無力さを感じながら、知ることから始めないといけない、と思わせてくれる。
なるべく多くの人に観てもらいたい作品です。
実話ってことが怖い…
本当にこんなひどい母親がいるのか、信じられない。
おばあちゃんは杏のことを庇ってくれたという台詞があったが、
もしかしたら、
昔は母親を虐待していたのかもしれないと疑った。
よく「負の連鎖」の話は耳にするから。
多々羅刑事に出会い、やっと人間らしい生活を手に入れたと思ったときに
コロナが蔓延。
ふと思い出したのが「特別定額給付金」のこと。
この家族受け取ったのだろうか?
間違いないのは、
杏は絶対に受け取ってはいないこと。
流れてくるニュースも理解してなかっただろう。
逆に、給付金を利用して儲けていた輩もたくさんいた。
本当にやるせない…
簡単に言葉にはできないが、
実際にこのような子がいたということは現実なんだ。
辛い映画ですが、
杏を演じた河合優実さんは素晴らしいと思いました。
モデルとなった実際いた方と、手を取るように演じたと
パンフレットには書かれていました。
日本のどこかで杏のような子は、他にもいるのかもしれない。
私たちはそれを知らないで生活してます。
だって、こうやって映画を見る生活を送っているのだから…。
でも、まずは知ること。
それで、今はいいのか、正直わかりません。
あんのこと、忘れない
*
主人公のモデルは朝日新聞の記事に
登場したハナ(仮名)
幼少期からの虐待や薬物依存を乗り越え
介護福祉士になる夢ができた
夜間中学で学ぶはずだったが
コロナ禍に前途を阻まれ、
2020年春25歳で命を絶った
*
これが現実に起きた話だなんて
信じたくない…
なぜ毒親は存在するんだろう…
その連鎖はなぜ止まらないのだろう
普通に学校へ行って、友達をつくって、
夢を見つけて勉強に励む…
そんな当たり前の権利が彼女には
与えられなかった
自分の身体と引き換えに
ただお金をつくって渡すだけの
ほんの一筋の光さえも見えない現実に
風穴を開けて光を見せてくれたのは多々羅だった
多々羅は杏のことを思ってサポートした
杏の目は生気と光を取り戻していった
初めての給料で杏は手帳を買った
なんでもない「普通」が輝いてみえた
おばあちゃんにケーキを振るまった
なんだか「普通」の家庭にみえた
ラーメン屋さんで3人でご飯を食べたり笑ったり
カラオケではしゃいだり安らぎの時間があった
その様子を見ていてずっとずっと
これが続いていったらいいのにと思った
このひとときは紛れもなく幸せだった
多々羅が居なくなってから
少しずつ変わって行く現実…
桐野はそのことに後悔のようなものを
抱いていたようだけど
彼は彼の仕事を全うにこなした
ただそれだけ
生活の基盤は整っていたから
多々羅や桐野が居なくなっても
杏は前に進んでいけるはずだった
しかしそれはコロナ禍によって
どんどんと破壊されていく
ほんとにコロナ禍が憎くて仕方ない…
彼女は犠牲者だ
介護施設での別れのシーン
お金や物ではない
「心」を、ただ、自分の存在を、
頼ってくれた時は嬉しかっただろうな
シェルターで暮らしていた
隣のシングルマザーから子の子守りを頼まれ
いきなり母になってしまったのは驚いたけど…
そんな状況も杏の持ち前のひたむきな努力と
責任感と前進力でこなしていっていた
すっかりお母さんのようになっていた
自分の親のようにはならないと覚悟して
精一杯の愛情を注いだのだろう
適応能力が並大抵ではない…
人と人との最後の絆のようなものが
取り上げられてしまい
またもや努力が泡となって消えた
もうやめてくれ…
一体彼女が何をしたというのだろう
ああ、あの日に逝ってしまったんだ…
頑張れって、ありがとうって、
空が応援してくれたあの日に逝ってしまったんだ…
ただただ絶望に暮れてしまって
涙すら出てこない
ただただ、たらればを繰り返す…
繰り返したって彼女は帰ってこないのに
*
杏がいまどんな気持ちで何を感じているのか
心の描写が細やかに表現されていて
すごくわかりやすかった、痛いくらいに…
とても重いテーマだったけれども
河合優実さんが尊敬の気持ちを込めながら
実在していた彼女を生き返してくれたから
目を背けずに最後まで見届けることができた
彼女の存在を知ることができてよかった
今日もどこかで彼女と同じような苦しみを
強いられている…その現実を胸に刻む。
*
多々羅も佐藤二朗さんしか考えられない
「タバコくらい吸っとけよ!」すこし笑った
杏を支えたい、助けたい、その気持ちは本心…
涙しながら彼女を慰めていた姿は嘘じゃない
だからこそ
自分の心の闇にもきちんと目を向けてほしかった
*
観たあとも胸に残る
これが実話なのか、、、物語が進むにつれてその境遇に衝撃を受け、さらにそれを演じる河合優実にも衝撃を受ける。どうか、どうか救われてほしい、そう願いながら叶わぬ結末に観おわったあとも気づけばずっと頭から離れない。
家に帰りこれを書きながらもう一度涙が流れた。
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