あんのことのレビュー・感想・評価
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事実は事実として。
実話に基づいたフィクションということで。
母親役の河井青葉の演技が、めちゃくちゃ良かった。彼女がいなかったら、成り立たない作品だろう。彼女の演技は映画史に残してほしい。
自分が、いわゆる「標準的な」環境で育ててもらい、こんな過酷な環境下になかったから、こんな生活は想像できないし、もし、目の前にいたら手を差し伸べられるのだろうか。
多々羅のように手を差し伸べて搾取し、あるいは、桐野のように正義感故の行動によってその逃げ場を奪い、あるいは、役所の窓口のように四角四面な対応をし、あるいは、その存在すら見もせずに過ごすのだろうか。
答えは見つからないけど、この世界のどこにでもこんな事があるのだと、心に留めておくべきなのだろう。
正直、似たような作品で『誰も知らない』があったが、そちらの方が完成度が高かったような気がしてしまった。すみません…
河合優実を観るための作品
御多分に洩れず、「不適切にも程がある」で知った女優、河合優実。これまたとんでもない若手が出てきた❗️と歓喜してたら主演映画と。これまた何と絶妙なタイミング❗️
なんてーふしぎなーちからー😁
河合優実はドラマでもそうだったが、あまり笑顔を見せない。ホントに、記憶の片隅にある、山口百恵を彷彿とさせる表情。
そんな彼女が、あんとして、ネグレクト売春薬物から只管に更生に励む日々を綴った、日記の様な映画だった。
正直、彼女だけで充分だった。
脇を二朗と吾郎が支えるのだが、
二朗のいつもより抑えた演技は、それでもまだ抑えが足らない気がする。恐らくは彼のパートは彼任せであろうが、もっと凄みと感情の昂りを抑える感じにして欲しい。同じセリフを4回言うシーンは若干暴走気味。
吾郎はいつもの感じだね。飄々として裏で何かを企む。今回はそれでも、あんの更生を一番応援してくれてた理解者であるから、もっと二朗とコミュニケーションがあっても良かった。
いつもならこういう脇の人が終始寄り添うものだが、それすら阻んでいた新型コロナのパンデミック。
急とはいえ子育てするあんには、あまりにも過酷な現実。そこに飲み込まれていった人間は、彼女だけではなかったはず。
「薬物依存の女性が」云々というニュースが流れても、自分は眼もくれない。そんなの自己責任でしょ、としか思わないだろうが、そのバックポーンや「マンボウ」が及ぼした影響は知る由もない。「密です」と言って遠ざけて良い話ではない。
物憂げな河合優実を、これ以上なく浴びた。
また目が離せない女優が増えた。
あの母親は、
「52ヘルツのクジラ」を想起した方も多いかな❓
そして唐突な早見あかり。
二朗と吾郎は逆でも良かったかもね。
違和感。
監督の作品だからという理由のみ、貧困系という以外の前情報なしで鑑賞。
うーん、言いたいことは分かるのだが弱い。紙巻タバコを選択している時点で、今の時代とのミスマッチを感じる。そういう人間としてデフォルメして描いているのだとは思うが、フィクションでもリアルに寄せないと、違和感がメッセージを凌駕してしまうのではないだろうか。
社会的弱者の行き着く先(職場)が介護職ってのも、定番中の定番だけど。描きやすいんだろうなと思う半面、チープな印象を受けてしまう。
主人公・あん。毒親、貧困の連鎖、救われない者はどの時代においても確かに存在する。
若い女性の方が注目されやすく、同情を得やすいのも確か。
同じように救われず成人した、世間から忘れ去られた男性も無数に存在するのだよな、とも思う。
近しいテーマでは昨年鑑賞した「遠いところ」の方が、でーじ良い、と感じた。
ここから目を背けてはならない
予告から、マスコミの是非を問うような作品かと思って鑑賞しましたが、そんな生やさしいものではありませんでした。衝撃に打ちのめされ、胸に強く刻まれるような作品でした。
ストーリーは、水商売の母親と足の悪い祖母と3人で暮らし、子どもの頃から体を売ることを母親に強要され、売春と麻薬の常習犯となっていた香川杏が、親身になってくれる刑事・多々羅との出会いをきっかけに更生をめざし、少しずつ生活も軌道に乗り始めた頃、またしても周囲の状況により苦しい生活を強いられていく姿を描くというもの。
冒頭からあまりにも重く苦しい描写が続き、胸を締め付けられます。子どもは親を選べないとよく言いますが、“親ガチャに外れた”という言葉では表しきれない、あまりにも理不尽な惨状がまざまざと描かれます。死んだ目をして、心をなくして、ぼろぼろになりながら体を売った金を毒親に渡す杏の姿に、胸を抉られます。
そんな杏に寄り添い、更生の道を示す多々羅の存在が、彼女の大きな支えとなっていきます。杏にとって、初めて信頼できる大人との出会いだったのでしょう。多々羅を介して、ジャーナリストの桐野、更生をめざす仲間、職場の理解ある上司と、人の温かさに触れ、少しずつ心を開き、懸命に頑張る姿が胸を打ちます。
それなのに、あれほど親身になってくれた多々羅の裏切りが、杏を激しく動揺させ、心を深く傷つけます。また、毒親はいつまでも杏の足を引っ張り続けます。親の愛情を知らずに育った杏が、そんな親でも捨てきれず、他人に押し付けられた子どもにも精いっぱいの愛情を注ぐ姿に胸が熱くなるとともに、そこにつけ込む母親の非人間性に吐き気がします。新型コロナが蔓延する中、心を通わす相手もなく、誰にも頼れず、孤独と不安が杏をさらに追い詰めていきます。
そんなさまざまな要因が重なって、ついに杏の心の糸は切れてしまったのでしょう。薬に逃げ、多々羅に救済され、裏切られ、それでも歯を食いしばって生きていたのに、母にまたもや踏みにじられ、再び薬に手を出した杏。最後は自分にさえ絶望し、もはやこの生き地獄から逃れる術は、自死しかないと思ったのでしょうか。彼女の心中を思うと言葉も出ません。
本作は、事実をもとにしているということですが、どこからどこまでが事実なのかはわかりません。でも、どのシーンを一つ切り取っても、おそらく日本のどこかで今も続いている事実でしょう。多くの日本人が気づかない、気づこうともしない、この国の現実や闇をまざまざと見せつけられた思いがします。かといって何の行動も起こしていない自分には、多々羅の行いを責める資格すらないように思います。虐待やヤングケアラーの問題が叫ばれる昨今、せめて自分の手の届く範囲だけは、できるだけの優しさを届けたいと思います。
主演は河合優実さんで、魂を揺さぶるような渾身の演技に胸を抉られます。脇を固めるのは、佐藤二朗さん、稲垣吾郎さん、河井青葉さん、早見あかりさんら。中でも、河井青葉さんの壮絶な毒親ぶりは必見です。
人を救うとは?What does it mean to save someone?
観ていて苦しかった。
毒親なんてレベルじゃない。
主人公の女性は
その優しさゆえ、
一人でそこから抜け出せないでいた。
誰かを放っておけない分、
自分を犠牲にする。
だから彼女は
自分に差し伸べられた手を握るのに
時間がかかった。
人から求められた手は、
何をさておいても握り返し
手放さないのに。
主人公の誠実さに、
心が痛くなる。
どこかで強さを育む時間があったら、
彼女の優しさには誰かを救う、
未来があったのに。
いや、一人救っていたか。
理不尽を見せつけられた。
ちくしょう。
It was painful to watch.
This was beyond just having toxic parents.
The female protagonist, because of her kindness,
couldn't escape from there on her own.
She sacrificed herself because she couldn't abandon anyone.
That's why it took her time to grasp the hand extended to her.
Whenever someone sought her hand,
she would grasp it back without hesitation and never let go.
The protagonist's sincerity makes my heart ache.
If she had time to cultivate some strength,
her kindness could have saved someone in the future.
No, she had already saved one person.
I was shown unfairness.
Damn it.
◯の積み重ね
売春や麻薬の常習犯である21歳の女性が向き合ってくれた刑事に薬物依存症回復団体を紹介されて前を向く話。
客がお薬で泡を吹いたことで警察の厄介になった主人公の前に、他とは毛色の異なる刑事が現れて、薬と売りをやめる決意をするストーリー。
THE毒親の紹介で12歳の時に初めて売春をし、薬に溺れつつ稼いだ金は親に奪取されという凄惨な家庭環境に胸が苦しくなる。
まともに学校にも行かず、それしか知らない暮らしに救いの手を差し伸べ寄り添ってくれた刑事、そして彼の取材をしていた記者。
そして抜け出す為の努力の前にも障壁として立ちはだかる母親。
更には頼れる人がいなくなり、そんな中訪れるパンデミックによる生きにくさとかタイミングが辛すぎる。
何もしなかったクセに膝から落ちトンチンカンなことを言う記者とか、何もわかっていない能天気なヤツで締めるのも、胸クソ悪さをダメ押しされた感じでたまらなかった。
こんな胸糞な映画あるだろうか。 毒親では足りないほど気の狂った母親...
今日も日本のどこかで繰り返される
『香川杏(河合優実)』は生活力の無い母親から暴力をふるわれて育ち
十二歳の頃から売春を強要され、
小学校にも通えず
二十一歳の今では麻薬も常用するように。
「私、頭が悪いから」と、ことあるごとに口にするも、正しくはない。
単に学ぶ機会が無かっただけで、
何かの際にはどうすれば良いのか、
誰に頼れば良いのかを知らないだけ。
無口なのも、どう表現すれば良いのかを学んでいないだけ。
そんな彼女が、型破りな刑事『多々羅(佐藤二朗)』に出会ったことで
更生への道を歩み始める。
『多々羅』は麻薬中毒者の面倒を親身に見、
自助グループさえも個人的に組織する。
しかしそんな彼も二面性を持つのが世の常であり、
後々にスレ違いを生む一要素に。
また『多々羅』主宰の「サルベージ赤羽」に出入りする
雑誌記者の『桐野(稲垣吾郎)』も同様。
『杏』に親身になる一方で、
『多々羅』の近くに居るのは何らかの理由があることが、
ちらほらと示唆される。
これも後に、正義と情の狭間で懊悩することに。
物語が始まるのは、コロナが流行する前の東京。
順調に世間並みの暮らしに近付いていた主人公は
コロナが猛威をふるうとともに、
一つ一つと退路を断たれ、
次第に立ち行かぬ状況に追い込まれる。
2020年のあの頃。我々が伝染病の影に怯える裏では、
こうした惨事があちこちで起きていたに違いない。
自身の子供を、生活のための道具くらいにしか考えていない親は、
残念ながら多いのだろう。
本作の『杏』の母親は、
日頃は罵詈雑言と暴力を浴びせるのに
時として「ママ」とあり得ない呼称で娘を呼び
強く懇願する。
本来であれば暖かい単語が、
ぞわっと背筋に突き刺さるように聴く者の耳に入って来る。
離れたいのに切れない血縁に縛られるのは
どれほどの絶望感か。
そしてまた肝心な時に、信頼し頼ることのできる人間が
身近に居ない心細さはいかばかりか。
冒頭、重い足取りで明け方の街を歩く主人公の背中を追うシーンは
終盤で再び繰り返され、
そこに我々は深い悲しみを見る。
自身の力だけでは、どうにも抗えない
世間や社会に対しての。
新聞には毎日を目を通していても、
本作の元になった事件は
たぶん読み飛ばしているのに違いない、
既視感のある、ありがちな記事として。
しかしその背景を詳しく知れば、
心が引き裂かれるほどの背景が詰まり
困窮する多くが遍在することを理解する。
その義憤を映像に繋げた『入江悠』も見事だし、
カラダを張って監督の期待に応えた『河合優実』にも
賛辞を贈らずにはいられない。
今年一番の衝撃作。悲しすぎて涙が出ない
絶望と閉塞感
絶望と閉塞感に満ちていますが、そこに指す微かな希望や光をもっと対比として鮮明に落とし込み描かれていれば、更に良かったかなと少し残念に思いました。
またディテールが消化不良で、ストーリーに深みが無くなってしまったようにも感じました。
それは週刊誌記者の桐野と刑事の多々羅の描き方にも現れています。善人か悪人かパーソナリティーの表現が中途半端で、もっとドロドロした人間臭さを出した方が面白かったと思いましたが…。
あと確かに近頃の若手の中では河合優実は良い演技をしていると思いますが、演技力についてはややワンパターン気味だし、皆さまが絶賛する程そんなに良いかな?
実力があって評価されていない人は他にも沢山いると思います。
ただ、今過大な評価をするのでは無くて、コレから更に期待出来る可能性の有る役者だとは思いますが…。
人生で見た最高の映画
ぐちゃぐちゃになった感情を引きずる
重く生々しく、良くも悪くも未知の領域
暗澹たる日本の現実を思い知る
超怒涛の衝撃作です。2021年夏、東京五輪の開会式に合わせブルーインパルスが青い空に真っ白な五線を描く、その下で少女が自らの命を絶った。あの思い出したくもない不快なオリンピックのポスターを随所にさりげなくフレームに移り込ませ、本作の時代設定を示すと同時に、その表と裏をくっきりと本作は焼き付ける。
実際の出来事に基づく、と冒頭のテロップ。よもやよもやの展開に疑念の余地を一切与えず、まるでドキュメンタリー映画のように対象に張り付く。ちょいと邦画では珍しく、米国の社会派映画の荒々しさで深層に迫る作劇。だから例えば稲垣吾郎扮する週刊誌記者が河合優実扮する主人公・香川杏に名刺を差し出すも、名刺を画面にアップしない。例えば杏がお婆ちゃんにケーキを買ってきた時、おり悪く毒母が男を連れ込んで登場するシーン。身も心も少し安定した杏を象徴するショートケーキが、映画では必然のようにグチャグチャにされる描写、当然に崩れたケーキをアップでカットするべきを、敢えてしない。積み重ねる映画的描写を捨て、切り返しも最小限に、リアルを覗き見る手法。
だから観ていてとても辛いのです、刑事・多々羅役の佐藤二朗も、ТV「不適切」で一躍メジャーとなった河合優実も知ってはいるけれど、あまりにリアル。そんな中やっと登場のメジャーな稲垣吾郎を観ると、当たり前ですが本作は再現フィクションと言う免罪符を以って、少し落ち着いて観る事が出来る程。とは言え、後半押し付けられた幼児の登場するシーンに至っては、明らかに泣きじゃくる幼児をフレームに収めながら取っ組み合いの喧嘩なんて、もう胸がはち切れそうなのです。無論、最大限のケアの下での撮影でしょうけれど、逆に役者も大変とつくづく思います。
こんな義務教育すら満足に受けられていない子供達、7人に1人が貧困生活、給食以外に食べ物もない少年・少女が確かに現在の日本にいる現実。全く機能していない我が国の為政者の実態が、あの青空のジェットスモークだと言う事。悪事も悪評も何時の間にか霧散して消えてしまうとばかりに。
それでも一方では地道なボランティア精神にいそしむ人々がいることを本作は確かに伝えてくれる。薬物依存脱却のための施設、まるで米国映画でしか観る事の出来ない集団での発言シーンは素晴らしい。人手不足の介護の現場職員も、DV避難の住居提供も、頭が下がる思いです。しかし、よりによって薬物依存脱却施設での悪事が週刊誌記者によって暴露され、砂上の楼閣のように拠り所が崩壊してしまう悲劇。被害者がいる以上、暴露し成敗せざるを得ないでしょうし、全く同次元でコロナ禍での閉鎖も主人公を追い詰める結果を導いてしまった悲劇。
冒頭からの茶髪を多々羅の庇護の元、ショートにカットした主人公、殆ど中学生くらいにしか見えない主役・河合優実。絶望の苦痛の表情をアップでまるで切り取ってくれない作品ながら圧巻の演技です。ちょっと前までは杉咲花の独壇場の役でしたが、時は移り今は河合優実だと強烈に印象付けられる。佐藤二朗も殆ど主役扱いで、普段はコメディタッチが多い事が逆に活きる。ベテランでしたら内野聖陽がぴったしの役ですがね。稲垣吾郎にはラストの自殺に驚くシーン以外にさしたる見せ場なく、少々勿体ない。最大のヒール役である毒母に扮した河井青葉はよくぞ頑張った、昨日観た「かくしごと」にも出てらっしゃったのね。
無謀にも幼児を押し付けた女に警察が言う「後悔してませんか?」と。このセリフ1つで幼児のその後の容態が一挙にクローズアップされ、最後になってその傍らに元気な姿を確認出来ほっとする段取りはいいけれど。が、あんたが無謀な事をしなければ杏は生きていたはずと、手を繋ぐ親子の最終カットに心底腹立つのです。
絶望の中に感じたもの…
「可哀想」が際立つ
公開当初から評判が良かったので劇場へ。
入江悠作品は何本か観てきたけど、やっぱりあんまり私の趣味とは合わないのかな。
河合優実の演技は光ってるし、「自宅が地獄」っていう残酷なシチュエーションも効いてる。
救いを与えてくれる人は皆途中で退場、地獄だけが向こうからしつこく追い掛けてくる。
思い返せば、あの毒親も自分の母親を守る為に客をとっていたんだろう。
公的な支援や活動も、時には牙を剥き、守るべき弱者から順に襲いかかる。
ただ、作品としては最終的にそんな主人公が「可哀想」に終始してしまった気がする。
多々羅の件もイマイチ腑に落ちないし。(個人的に佐藤二朗が苦手ということもあるが)
ホントなら、あの男の子は彼女が残した数少ない「優しさ」「生きた証」だったはずなんだけど、ほぼ懐いた様子もなかったし。もう少しここの光を描くか、逆にもっと突き放すかしてくれたら、印象は違ってたと思う。
早見あかり扮する無責任な母親にフォローされても「お前が言うな」って感じ。
必死で頑張っても仇で返され、苦しんで苦しんで、それでも闘ってそして…
次は?
行き止まり?
このラストまでが実話なのであれば、もちろん取って付けた様な美談にすることはできないってのも分かる。
でも、「可哀想」で終わるよりは「それでも彼女は必死で生きた」という部分がもう少しあれば。
そんな変なモヤモヤが残った。
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