あんのことのレビュー・感想・評価
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他人事ではない世界なんだと覚悟せよ
なんで、なんで観ているのだろうと途中で思ったけど、引き返せないぐらいの求心力にやられ、最後までヒリヒリしながら鑑賞。映画の力を感じた。ほら、さっきすれ違った子が似たような境遇だよって言われても私は最近、驚かない。もう他人事ではないんだ。自分の周りにこんな深い底なしの井戸みたいな事あるんだ。じゃあ、自分に何ができるの?2人目の「あん」を生み出さないために。そうだ、社会を変えたい!って気持ちに火をつける。それが一つの映画の役割だと思う。社会と関わる。選挙に投票する。私達は無力ではないと信じる。この映画を撮った信念に感服です。
ただしいこととただしくないこと⋯⋯
あぁこんな事件があったのは記憶に残ってて『親が子にこんな事するなんて世も末だな』て思った。
でもスクリーンを通さなくても自分の周りにも起きているし見過ごしているし、見て見ぬふりをしている事ばかり。
生きていくのに必死であがき続けて良くないこともしてしまうのを誰が止めることが出来る?
当の本人は死にたくないから、逃げる術を知らず奪われ追い込まれているのに⋯⋯。
人が人を救うのは容易い事ではない。救いを求め神や仏やドラッグに酒に溺れるのだから。
そう溺れるものは藁にもすがる。そんな人を救うのはムズカシイのだから。
この作品の「救い」は人は立ち直りやり直す事が出来、一日一日積み重ねを絶やさぬ事が強くなれる最短の道⋯⋯だったらいいのに。
この世に強い奴なんておるんかいや?
みんな紙一重な毎日をやり過ごしているんちゃう?
主人公は何度も何度も殺されても何としても生き立ち直りたかった。でも救われなかった。
親を殺すこともしなかったのに。
1番辛かったのは母性本能すら奪われ、希望を断ち切られた事。
愛されることなく生きてきたのに愛することを知りそして絶望の淵に叩きのめされた彼女を誰が救える?
ベランダから出ていく彼女の腕を捕まえることが果たして救いなのだろうか?
人が真っ当に生きていくのは本当に奇跡なのかもしれない。
救いのないお話
救いのない、幸の薄い女性のお話です。
後味が悪い作品ですが、これが現実に起こっていることなのだと思うと映画で描かれる価値のあるものだと思いました。
この映画のポイントは河合優実さんと佐藤二朗さんの演技だと思います。主人公の杏は作品の中であまり喋らない、どちらかというと無口に近い女性です。しかし、間の取り方や息遣い、泣き声、動作など河合優実さんの非言語的な演技から杏の感情がひしひしと伝わってきます。アカデミー賞も納得です。佐藤二朗さんもいつものコメディを封印して、薬物依存者を支えたいという善人の部分と庇いきれない不祥事を犯してしまう悪人の部分を併せ持った複雑な人物を演じています。映画の終盤にある記者との面会のシーンの演技は鳥肌がたちました。
映画の中で杏が亡くなった後、杏に子どもを預けた母親が「杏は恩人だ」と言っていたのがやるせない気持ちになりました。その言葉を生きている杏が聞けていたら、もっと結末は違ったのかもしれないのに。そしてこれは、実在した女性についても言えることだと私は思います。彼女が亡くなった後、こうして彼女の人生が映画化され、多くの人が彼女の人生を重く受けとめています。彼女が生きている間に、彼女の夢が閉ざされる前にもっと何かが変わっていればと思うばかりです。過酷な人生を懸命に生きた女性のご冥福を心よりお祈りいたします。
毒親
幼いころからDVし放題で万引き、売春、麻薬迄押し付ける母親に虐げられ人生の道を踏み外した女性が親身に支えてくれる刑事によって新しい人生を歩み始めた矢先、コロナ禍で生活が一変、自殺した不幸な女性がいたこと、善人だと思った刑事が犯罪者だったことなどが実話だったとは信じがたい驚きだ。どうしたら、こんな酷いことが実の娘にできるのだろうか・・。
子供を虐待する親の犯罪報道は耳にするが、そんな若者や大人をつくってしまった原因は何なのだろう・・。性善説を信じたい自分にとっては救いのない実話ドラマ、あんが隣のシングルマザーから息子を預かる下りはフィクションで入江監督は子への虐待癖は遺伝ではないことを示したかったそうだ。
日本アカデミー賞で話題になったので観たのだが、兎に角、胸が痛むエピソードばかり、正直言えば映画にしてまで観たくはなかった・・。
苦しい…あんまりにも苦しい
世の中にはこんな最低な母親がいるのか
そんな家庭環境で育ってもここまで更生できたのは
杏ちゃん自身の力と出会いだった
こんな母親のもとでも
優しくて真面目でいい子で育つんだな
後半はほんとに見るのが苦しくて
何回も悔しくて泣いた
自殺シーンは辛すぎて真っ直ぐ見れなかった
最後はやとの恩人だと言ってくれたことで
少しだけ救われた希望を少しでも残せた
母親に騙されて体を売らされて
帰ってきてみればはやとを失って
ほんとにどんな思いだったのか
筆舌に尽くしがたい
最優秀主演女優賞も納得
河合優実はすごいなあと実感した。精神的に持つのかとも。人生には親ガチャ含めリスクやめぐり合わせがあり(各々、生い立ちや多面性がある)、如何にセーフティーネットを設けて、かつ、機能・運用させるのか、考えさせられた。最後に少し救いを感じた。
河合優実さんの熱演に拍手👏👏
コロナ禍で浮き彫りになったこと
なかなか後味の悪い作品でしたが、本作のおかげで色々と考えるきっかけになりました。
拝観後にコロナ禍での自殺率を調べてみると、
若年層の女性の自殺率がかなり増加したそうです。特に無職の女性。
浅い知識で安易な考察をするのは良くないですが、本作の主人公と似た境遇になった方も少なくなかったのではと思いました。
有事の際、まず仕事がなくなるのは非正規雇用者であり、
それを救う公的システムはとても脆弱。
あんさんのような人を生み出さないためにはどうすれば良いのか、問題は複雑で色々な課題が絡み合っている。
きっと映画を見る人はこういった問題を解決する側に回らなければならないのだろうと思いました。
私に何ができるのか、考えなければと思いました。
杏はどうすればよかったのか
想像通りの映画
行政の救済措置が、点でしかなく、しかもザルであること。
クソな生活からの悲痛な叫び
本作で主演を務めた河合優実が、昨日の日本アカデミー賞で、見事、最優秀女優賞受賞した話題作。最初から最後まで重く、嫌悪感に包まれたシーンが続く、社会派ドラマ。鑑賞後、やり切れない悲しさと、何もできない無力感だけが、ズタズタに心を抉っていった。登場人物の誰一人も救われない中、唯一の光は、あんが一時でも一緒に暮らした、幼い子供だったのではないだろうか。
幼少期から貧困と虐待の中で育ち、売春と薬物にも手を染めた一人の少女。そんな生活からの悲痛な叫びに対して、結局、誰も手を差し伸べられず、あまりにも儚く、虚しい人生を終えた香川杏(あん)という少女の壮絶な人生を元にした作品。2020年に彼女の自殺記事を目にしたプロデューサーが、この記事に衝撃を受け、この事実を広く知らしめるために、映画化した作品でもある。
自分の仕事柄、こうした家庭に育つ子供を児童相談所に保護してもらったり、実際に、ここに登場する様なゴミ屋敷と化し、据えた匂いが染みついた家庭に訪問し、子供を連れて学校に通わせたりしたこともある。決して、どこか遠い家庭の話ではなく、直ぐ隣近所でも、子供が犠牲になるこうした事案は起きている。そんな家庭環境には、「親の教育力のなさ」「将来への困り感のなさ」「子供への愛情欠如」といった、同じキーワードが存在すると感じた。
母子家庭の中、足の悪い祖母を庇いながらも、実母からは虐待を受け、小学校にも通わせてもらえず、12歳から売春、薬物をも強要され、社会の底辺を生きてきた、香川杏。そんな杏を更生させようと、一人の型破りな刑事・多田羅が力になったことで,杏は少しずつ心を開き、母親からの離別を決意する。そして、介護施設で働くながら、夜間中学校で勉強も始める。
しかしそんな折、コロナ感染が広まり、仕事を失い、生きがいを失くす。また、親切にしてくれていた多田羅が、更生者の女性に対して性加害者と報じられ、再び孤独と不安に押しつぶされそうになる。そんな中、隣人のシングルマザーが、杏に子供を押し付けて疾走してしまう。杏は、不器用ながらもその子に愛情を注ぎ、一緒に生活を始めた矢先、あんの母親が居所を突き止め、その子を連れて母のアパートに戻ることになる。そして…。
河合優実は、役を演じているというより、その記事となった少女そのもののドキュメントにも見えたし、目線の合わない空虚な目の中に、彼女がこの役に乗り移った魂の様なものを感じた。今回の最優秀女優賞ノミネートの中でも、一番若いにもかかわらず、栄冠に輝いたのは、大いに納得できる内容だった。
神の沈黙
主人公の杏は、何度となく信じた人に裏切られ、絶望に突き落とされる。
神が沈黙しているかのようだ。
彼女はあまり直接的に感情を表に出さないし、
強い映像や音楽の演出もないのに関わらず、
ちょっとした幸せ、前向きな気持ち、絶望感などの内面が
画面を観ているこちらにひしひしと伝わってくるのがほんとうに凄い。
さらに杏の抑制された佇まいや眼差しは、
瞬間的に周りの人間の罪をすべて背負う殉教者の姿にも見え、
かつ、善と悪の同居や正義とは何か、というテーマをも含んでいるストーリーが
単なる悲劇的な物語であることを大きく超えて、高い地点に到達する表現となって、
より深い、長い、強烈な余韻を残すことに繋がっていると感じた。
杏の子供のころの母との幸せだったかもしれない関係を暗示するような、
微かな救いを提示するラストもすばらしい。
哀しみよりも怒りが先に。。
この怒り どこにぶつければいいのか
話題作ということと、旬な河合優実主演ということで鑑賞。
なんの下調べも無しで鑑賞しただけに、本作の重さに言葉を失う。なんと辛い作品なのだろうか。とても令和とは思えない荒みすぎた家庭環境だし、すでに忘れつつあるが当時は前代未聞のコロナ禍の脅威もあらためて心に影を落とす。この理不尽さ、腹がたってしかたがない。
そんな中で様々な心に刺さる言葉が行き交う。特に多々羅の講演「だから、だから、まずは今日。それから明日。~一日一日の積み重ねだ。ちっちゃな1日が1週間になる、1ヶ月になる。1年になる。いいか、積み重ねだ」は、ありがちではあるが佐藤二朗の演技力もあってかかなり響いた。佐藤二朗つながりでいえば「彼女は薬をやめられていたんです」も印象的。
実話に基づいたストーリーはとても練られていて、心の深いところへ訴えかけてくる作品ではあるのだが、どことなく映画という観点からは映像・音楽等々物足りなさを感じた。
実は個人的には河合優美の演技は本作が初めて。評判通りの好演技ではあったが、実際には高学歴といわれている河合優美が演じるのは少々無理がある配役だったかも。
どことなく「神の子はつぶやく」のような
母親に強要されて売りやらシャブやらのヒロインが河合優実なので母親がカルト宗教に入信したのをきっかけに「宗教二世」になったヒロインを演じた「神の子はつぶやく」に似通ってしまう。「神の子はつぶやく」は家族の再生が始まるところで終わるが「あんのこと」は救われないまま終わる。それでもシャブをやめたり押し付けられた子どもを育児し得たりした事を暗示したシーンがあるので辛うじて救いは残っている。ただしコロナ禍の時期のシーンで演者がマスクをすると口元が分からなくなるからかマスクをしないシーンが多いのは気になった。最初の頃のシーンで河合優実はカツラを被っているので「ふてほど」の純子みたい。何も「神の子はつぶやく」や「ふてほど」、「ナミビアの砂漠」のような余人には出来ないような破壊力があって印象に残る演技だけでなく「かぞかぞ」のような下手すると「24時間テレビ」あたりで放送するドラマの筋書きに成りかねないのが正反対なくらいに幸せな家族の中心に上手くハマったヒロインを演じ切れるのが河合優実という演者の持つ魅力だ。母親役の河井青葉がヒロインを蹴り付ける演技も見ものだ。河井青葉は同じNHKで放送した「神の子はつぶやく」のような「宗教二世」ものと違って「仮想儀礼」で男2人が生活費稼ぎに立ち上げたインチキ宗教に入信した信者役の1人だった。
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