「クソな生活からの悲痛な叫び」あんのこと bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
クソな生活からの悲痛な叫び
本作で主演を務めた河合優実が、昨日の日本アカデミー賞で、見事、最優秀女優賞受賞した話題作。最初から最後まで重く、嫌悪感に包まれたシーンが続く、社会派ドラマ。鑑賞後、やり切れない悲しさと、何もできない無力感だけが、ズタズタに心を抉っていった。登場人物の誰一人も救われない中、唯一の光は、あんが一時でも一緒に暮らした、幼い子供だったのではないだろうか。
幼少期から貧困と虐待の中で育ち、売春と薬物にも手を染めた一人の少女。そんな生活からの悲痛な叫びに対して、結局、誰も手を差し伸べられず、あまりにも儚く、虚しい人生を終えた香川杏(あん)という少女の壮絶な人生を元にした作品。2020年に彼女の自殺記事を目にしたプロデューサーが、この記事に衝撃を受け、この事実を広く知らしめるために、映画化した作品でもある。
自分の仕事柄、こうした家庭に育つ子供を児童相談所に保護してもらったり、実際に、ここに登場する様なゴミ屋敷と化し、据えた匂いが染みついた家庭に訪問し、子供を連れて学校に通わせたりしたこともある。決して、どこか遠い家庭の話ではなく、直ぐ隣近所でも、子供が犠牲になるこうした事案は起きている。そんな家庭環境には、「親の教育力のなさ」「将来への困り感のなさ」「子供への愛情欠如」といった、同じキーワードが存在すると感じた。
母子家庭の中、足の悪い祖母を庇いながらも、実母からは虐待を受け、小学校にも通わせてもらえず、12歳から売春、薬物をも強要され、社会の底辺を生きてきた、香川杏。そんな杏を更生させようと、一人の型破りな刑事・多田羅が力になったことで,杏は少しずつ心を開き、母親からの離別を決意する。そして、介護施設で働くながら、夜間中学校で勉強も始める。
しかしそんな折、コロナ感染が広まり、仕事を失い、生きがいを失くす。また、親切にしてくれていた多田羅が、更生者の女性に対して性加害者と報じられ、再び孤独と不安に押しつぶされそうになる。そんな中、隣人のシングルマザーが、杏に子供を押し付けて疾走してしまう。杏は、不器用ながらもその子に愛情を注ぎ、一緒に生活を始めた矢先、あんの母親が居所を突き止め、その子を連れて母のアパートに戻ることになる。そして…。
河合優実は、役を演じているというより、その記事となった少女そのもののドキュメントにも見えたし、目線の合わない空虚な目の中に、彼女がこの役に乗り移った魂の様なものを感じた。今回の最優秀女優賞ノミネートの中でも、一番若いにもかかわらず、栄冠に輝いたのは、大いに納得できる内容だった。
ゆきさん(^^)最優秀賞女優賞は、作品を観て納得です。やはり、毒親によるマインドコントロールから抜け出せないんでしょうね。
声にならない悲痛な叫びが、聞こえてくる作品でした。
こんばんは。
コメント失礼しますm(__)m
優実ちゃんがこの作品で、最優秀賞を獲れたことが本当に嬉しかったです。
(今回はさとみちゃん残念でした。敵が強すぎた!)
あの毒親の母親に怒りの感情MAXでしたが、彼女も被害者といえるのかも。。
一見すると可哀想に映る足の悪い祖母も、考えてみればあの杏の母親の親なわけで。。
杏に対する祖母の態度もあり得ないと思いました。
負の連鎖を断ち切るのは難しいですね。。
やるせなくなりました。
Moiさん(^^)コメントありがとうございます😊また、仕事についても、ご理解いただき感謝します。親の都合で、犠牲になりのは子供なんです。少しでも独り立ちできる子供が増えてくれたら、自分も嬉しく思います。
共感ありがとうございます。
割合淡々とした描き方で、ヒステリックに泣き叫ぶは抑えていたと思いました。一人の善意だけに頼っては解決にならない、的外れな金のかけ方も、それが残りましたね。
本当に悲惨な現実があるのだと本作初鑑賞時には驚愕しました。日々のお仕事の中に本作で取り上げられている問題を目の当たりにするとの事。bunmei21さん達のお仕事は社会的意義の高い重要なお仕事とお見受けしました。いつも大変お疲れ様でございます。心が荒む時もあるかもしれませんが、どうか気持ちをリフレッシュしながら少しでも窮地に立つ人々の心をも含めた救済活動が最善の道となり開けます様祈念します。