劇場公開日 2024年6月7日

「さようなら「あんのこと」。」あんのこと 春さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0さようなら「あんのこと」。

2024年7月3日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

一ヶ月前に一度観賞しましたが悲惨過ぎて、もう一度観賞するのを躊躇していましたが客観的に心に留めたいと考え再度観賞しました。

安易に泣く事も出来ない程に辛い映画ではありますが、お茶の間で有名な俳優さん達の熱演でエンターテイメントの枠内にギリギリ踏み留まり観客にメッセージを受け止めた上で考える余地も与える優れた作品になったと思います。

2020年に自殺してしまった実在の女性の人生を土台に、入江監督を始め製作陣がオリジナルの要素を多々追加し、それらを踏まえた河合優美さんが繊細で優しい演技で「あん」に命を与えたのだと感じました。全ての暴力に曝される弱者の総体として生まれた「あん」が、余りに悲惨な状況を抜け出して幸せという光に向かって歩き始めた途端に、全ての大人達によって自殺に追い込まれます。(新型コロナ流行や援助者である刑事一人の脱落で簡単に孤立に追いやる社会も私達が作った物だと思う。)虐待の主体である母親も何らかの虐待の被害者であったのかもしれない事が父親のあからさま不在によって匂わされていると感じた。現実でも頻繁にあるであろう虐待の連鎖の悲惨さに言葉も出ない。娘を「ママ!」と呼ぶ母親の恐ろしさは(映画オリジナル要素との事)、現実に起こる多く虐待の一つの根っ子の様で寒気がしました。
物語後半の幼児を押し付けられる下りは映画オリジナルのエピソードだそうですが虐待の連鎖を絶ちきり幼児を愛し保護する「あん」は余りに優しく、だからこそ余りに悲しく感じました。

親子が光りのある方に向かって廊下を歩いて行くラストシーン。
初見では無責任な母親の能天気な後ろ姿に見えたのですが。2回目の観賞の今回は「あんの物語」を引き継ぎ負の連鎖を断ち切った希望のラストシーンだったのではないだろうかと考えるようになりました。

私自身がリアルで児童虐待防止運動に微力ながら協力させていただく事になり落ちがついたので、この作品を観させていただくのはこれが最後かな?

春
たかなさんのコメント
2024年7月12日

同じ映画館で観ました(ちょっと独特ですよね)。あの空間で急に閉所恐怖症になったような妙な感覚で、エンドロール終わってもすぐに立てませんでした。
こちらを読んで、あの感覚を思い出しました。

たかな
humさんのコメント
2024年7月6日

ご自身の生き方に反映させる行動力、見習いたいと思います。そんな大人が1人でも増えることが社会を変えていきますね。
他作への共感もありがとうございました。

hum
カールⅢ世さんのコメント
2024年7月4日

2度見る勇気、ときには必要ですね。オトシマエをつけるためにも。アタシも2度観ました。

カールⅢ世