「境界線」あんのこと ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
境界線
作品としては実話ベースできっとキツいんだろうなとは思いつつも、河合優実さんが出演しているとならば観に行かなきゃなと上半期滑り込みで鑑賞。
観る側の心を抉っていく地獄映画でした。
救いの糸が見えた瞬間にぶった斬られ、絶望へと落としていくループで観終わった後は肩をずっしり落としていました。
今作は終わっている家庭環境から始まり、子供の頃から売春に薬、そして娘を金づるにしか観ていない母親の下衆さがキツく、彼女が出てくるたびに拒絶反応が出るレベルでした。
これまた希望が照らし出したタイミングで登場して、幼児退行したり、暴力を振るってきたりするので、胸糞さは限界突破していきます。
そこから手を差し伸べてくれる刑事や記者に助けられ、介護施設での仕事で改心していく様子も見られ、中盤では再生の糸口が見えていたんですが、コロナ禍という未曾有の事態には抗うこともできず、仕事も生活もグチャグチャにされていく様子が生々しかったです。
その前後にも刑事の汚職が判明したり、知らない人から子供を預けられたり、どんどんと窮地に追い詰められていき、トドメの母親の行動や言動がこれまた腑煮えくりかえるもので、それがきっかけでプツッと切れてしまった糸を取り戻すことが出来ずに…。
ここまで生々しいものが事実なのかというところに驚き、声も言葉も出なかったです。
役者陣も撮影中の葛藤が凄まじいものだったと思いますし、その中でも座長を務めた河合優実さんの振れ幅がこれまた素晴らしく、絶望の表情も希望に満ちた表情も美しかったです。
若干ノイズだったのが杏の死後に、杏に娘を預けた母親が色々答えているところで、児童相談所から取り返すのが大変だったとか。なんか自分が悪くないということを強調させている感じや、上辺だけの杏への感謝だったりと、なんかこうここは事実ではないんだろうなという釈然としないものがありました。
どうしても杏の最後を桐野が見て腰を抜かしたところで終わった方がまだキチっと終わったのになという惜しさがありました。
コロナ禍や毒親の闇、自分はコロナ禍も安定して仕事がありましたし、両親には大切に育てられてきたので、どうしても強烈に喰らってしまうところがありましたが、それでもこの事実に向き合う強さを身につけていきたいと思いました。
それでも行動に移すのは難しいですし、そんな事実に気付けない自分がいるのは確かなのが歯痒いところです。
鑑賞日 6/27
鑑賞時間 9:55〜11:55
座席 D-13