「社会とのつながりが深まり、世界を新しい感覚でとらえるきっかけになります。」あんのこと jasperさんの映画レビュー(感想・評価)
社会とのつながりが深まり、世界を新しい感覚でとらえるきっかけになります。
▪️感想
現実にあった話でズシンと重かった。
自分が住む国で同じ時代に、あんのような人がいることをこの映画で知ることができた。
アンダーグラウンドな世界が日常のすぐ近くにある、あんの生きつらさにヒリヒリした。
▪️気づいたこと
序盤では、覚醒剤をやめて社会復帰していくあんの姿が描かれるが、面接や仕事が決まった時、住む場所が決まった時も常に刑事は見守ってくれた。仕事が決まった時に3人で祝杯をあげた時のささやかな喜びはとてもキラキラして、スクリーンに釘付けになった。
あんが、毒親とおばあちゃんを売春で養いながらシャブで気持ちをハイにする毎日から更生していくうちに、あんの内面が変化していったように見えた。受身で人形のような性格から、力強く前に進んでいく性格に変わっていったように見えた。
あんは、介護の仕事で自分が誰かの役に立っていることに社会とのつながりを感じただろうか。隣人から無理に押し付けられた子供の世話は、あんに生きがいを与えただろうか。
あんは自分と社会とのつながりを作るきっかけになった刑事が捕まったことは現実として受け入れたのかもしれない。つながりを断ちたい肉親とは、最後までつながりを断つことができなかったのに、つながりたい人達とは分断されてしまう。あんは、自分と社会がつながっても、すぐにほどけてしまうことに絶望して疲れてまい、死んだ方が楽だと感じたのだろうか。
▪️登場人物について
毒親の存在の痛々しさが、部屋の汚さや娘をママと呼ぶところ、キツイ言葉使いにも感じられた。
新聞記者の接し方は、適度な距離感を保っているように感じた。その分、あんが辛い時に声をかけにくかったのだろう。刑事には頼れたけど記者には頼れなかったのか。
刑事の女性への接し方には序盤から不穏でざわざわしたが、後半に「やっぱりそうか」となった。刑事は性犯罪を犯していたが、聖人ではないところが人間くさく、あんや他の薬物中毒者たちを救いたい気持ちは本気だったように感じた。
▪️おすすめしたい
「あんのこと」は1人の女性の現実を描いた映画です。この映画を観れば、社会とのつながりが深まり、世界を新しい感覚でとらえるきっかけになるので、多くの人に観てほしい、強くおすすめします。