「フジコ・ヘミングとジブリと魔法」恋するピアニスト フジコ・ヘミング ミズ、ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
フジコ・ヘミングとジブリと魔法
ミーハーな友達に連れられて誰のコンサートかよくわからないまま行ったサントリーホールで、フジコ・ヘミングが出てきた瞬間に勝手に涙が出てきたのを思い出した。
その後、初めて彼女のピアノを聴いて、たぶん2時間くらいあったけど、時間が止まってるような、息するのも忘れるほどにあっという間だったような、魔法のような時間を過ごした。
予告を見て、まさか恋愛メインのドキュメンタリーかとちょっと怪訝に思ってたけど、全然そんなことはなかった。
ちゃんとフルでカンパネラも黒鍵のエチュードも聴けた。なんて贅沢な時間。
晩年の彼女を改めて見ると、なんだかジブリ作品に出てくるおばあさんのようだった。
本人も気にしている大きな手、アングルによっては手だけ別人に見えるほど。
ふしくれだったその大きな手は、ミトジィを彷彿とさせる。
私がピアノで弾ける曲はきらきら星くらいのド素人だけど、真上からのアングルで見るとまるで撫でているかのようにラ・カンパネラを弾いている凄さに驚く。
ピアノってそんなに軽く触って音が出るんだっけ?と思うほどに。
CDで聴くと連弾してるかのように聴こえるこの曲を、こんな風に弾いていたのですね。
素人でも「あれ今の音違った?」と思う箇所もあったけど、ご本人も言ってたけど、そんなことはどうでもいい。
彼女のピアノだから。流れを、魂を揺さぶる勢いを止めないで弾ききってくれることが素晴らしいのだ。
まさか弟のウルフさんが先に亡くなるとは…
でも向こうでご家族や可愛がってきたワンちゃん猫ちゃんに会えたことでしょう。
カーネギーホールで演奏ができなかったのは残念ですが、きっと仕方ないわねと静かに笑われるのでしょう。
亡くなった後にNHKでやってたドキュメンタリーより、こっちのほうが格段に良かった。テレビと映画の違いですな。
フジコさん、今までたくさんの素敵な演奏をありがとう。
ご冥福を心よりお祈りいたします。