「村上春樹とアニメーション、相性良し」めくらやなぎと眠る女 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
村上春樹とアニメーション、相性良し
村上春樹の短編作品のいくつかを再構成して一本の物語へと仕立て直している。舞台は震災後の日本で、震災ニュースを延々と見続ける妻が突然失踪し失意の中にいる男と、その同僚である日突然巨大なカエルに自身を止めて東京を救えと言われる冴えない男を中心に、シュールで不可思議な人間模様を描く作品だ。村上春樹のシュール系の短編はアニメーションとこんなに相性いいのかと思わされた。ゆらゆらと不確かな実存に悩む人々の物語と言えるが、その不確かさがアニメーションという固定的な形状を持たなくて良い媒体で、映像として巧みに表現されていて面白い。
やっぱり「かえるくん、東京を救う」のエピソードは面白い。奇妙なカエルが突然目の前に現れて喋り出すだけでもシュールだが、そのシュールさに違和感も何も感じさせないのは、このアートスタイルだからか。
白昼夢を見ているかのような、奇妙な感覚に心地よさを感じさせる作品だ。
こういう企画は日本のアニメではなかなか成立できない。そういう意味でも貴重。
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