「子の心親知らず」ポッド・ジェネレーション ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
子の心親知らず
自身が妊娠するのではなく、卵のフォルムをしたポッドの中で子供を育てるというあり得るかもしれない未来のもしもを題材にした作品で、こういうSF(すこしふしぎな)がとても大好物なので、映画の日4本目、ケツを痛めつつも踏ん張って劇場へ。夜勤が多いため、レイトショーは中々行かないんですが、人入りが落ち着いててとても観やすかったです。
序盤からAIに頼りきりな世界が映され、窓の開閉も朝食の準備も、今日の服装も全てAIがアドバイスしてくれて、それに従うように服を着たり、お礼がないとコーヒーを下げたり、仕事の効率化を要求したりとかなり知能の発達したAIがその世界では当たり前のようにいて、こんな未来は嫌だなーというのをのっけから見せつけてきます。
カウンセラー代わりのAIがこれまた論破してくるタイプなので、言ってることは的を得ているんだけど、なんだか上から目線なところに違和感を持たないのか?と思いながら観ていました。
ポッドで育てるという設定はとても面白く、つわりによって長い事痛みに襲われることも、お尻からスイカが出るという例え話みたいな激痛を味わうことなく出産できるとなったら、女性の負担はかなり減るよなと思いました。
設定の良さはかなり光っていたんですが、この状況の主人公夫婦の感情の揺れ動きっぷりはかなりノイズでした。最初は否定的だったし、自然に出産するべきだと豪語していたはずの夫は特に理由もなくポッドで子供を育てる事に賛成し出しますし、妻は最初はゴリ押ししていたのに、ポッド型に対しての疑問を大きくしていき、自宅出産したいとまで言い出すので、この作品のテーマが破綻しちゃうよーと薄い目で見てしまいました。
この夫婦、別に人としてダメというわけではないんですが、どうも他人やAIに流されやすいせいかコロッコロ考えが変わっては色んなとこに迷惑をかけてしまっていたりと違和感まみれだったのが惜しかったです。
ポッドの中の赤ちゃんに愛着が湧いてきて、自身の手で育てたいと夫婦は思うけれど、それは規則上できないという中、だいぶ雑にポッドを持ち出して、そのまま別荘のある島に行ってそこで出産するというアクティブさを突然見せてきます。
そこでポッドの電源がセンターから遠隔で切られて48時間経つと死んでしまうという大変な状況なのに、頑張ればなんとかなる!という結構楽観的だなと思っていたら、突然焦り出してポッドをこじ開けて子供を出そうとするという未来とはなんぞや?みたいな事になってかなり冷めました。
しかも赤ちゃんが産まれた後は色々と大変なはずなのにわーいわーいと喜んだのち、一緒に布団で寝るとかいう、もし寝返り打ったら潰れてしまうぞ、とか呼吸とかは何もしなくて大丈夫なのか?という心配が勝ってしまい観ている側の方が焦ってしまいました。
ポッドを返却する時もかなり雑な扱いでしたし、何か訴えられてもこれはしょうがないぞって感じで終わっていくので残念でした。
モヤモヤした本編を終えて、番組の司会者とポッドを作った社長が会話の中で、「赤ちゃんが親を選べるようになるといいですね」というフレーズに今作含めて親に対しての皮肉を言い放っていて笑ってしまいました。そりゃ愛情が注がれていないのに途中から合流する親とか嫌ですもん。
面白い設定の割には、本編はかなりチグハグでした。男性と女性、子供がいるかいないかで評価は分かれるのかなーと思いました。自分にはどうもハマらなかったです。映画の日、4作品目で終了です。また来年。
鑑賞日 12/1
鑑賞時間 20:00〜22:05
座席 F-11