「服をデザインする面白さより、人情、根性、奔放さに重点」ゴッドマザー コシノアヤコの生涯 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
服をデザインする面白さより、人情、根性、奔放さに重点
小篠綾子の生涯はNHK朝ドラ「カーネーション」でも描かれたそうだが、あいにく未見。ファッションデザイナーのコシノ三姉妹の母親ということで、どんな育て方や影響があって娘たちが服のデザインに興味を持ったのか、のちにそれぞれブランドを立ち上げて成功する彼女らの創作の原点やデザイン上の個性なども個人的な関心ポイントだった。
だが曽根剛監督と脚本・池田テツヒロのコンビは、より普遍的な家族の物語という大枠の中で、アヤコが持ち前の根性と親きょうだいの支えもあって洋装店を開業した話や、時代に先駆けるがごとく自由奔放に生き、娘たちにも各自の可能性を信じ時には厳しく接しながらも愛情を注ぎ育てたエピソードを仕立てていく。
アヤコ役・大地真央の宝塚歌劇団出身ゆえのパフォーマンスを活かしたミュージカル風の演出や、彩色されたデザイン画のキャラクターたちがアニメーションになって踊り出すシーンは映画らしい見せ場になっていた。ただ残念ながら、服をデザインすることの面白さや、デザインしたファッションがイメージ通りにできあがる喜びなど、デザイナーという仕事の魅力を伝えることは重視されなかったようだ。
出演陣の中では、情報番組「朝だ!生です旅サラダ」で存在を知った水上京香(ミチコ役)、ドラマ「ブラッシュアップライフ」の大人の意識を持つ保育園児が最高だった永尾柚乃(幼少期のジュンコ役)が好ましかった。
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