劇場公開日 2024年5月3日

「ほぼ無条件におすすめできるが、一応の注意書きは欲しかった」青春18×2 君へと続く道 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ほぼ無条件におすすめできるが、一応の注意書きは欲しかった

2024年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年171本目(合計1,263本目/今月(2024年5月度)5本目)。
(前の作品 「無名」→この作品「青春18×2 君へと続く道」→次の作品「バジーノイズ」)

 日台合作とのことで、日本・台湾のどちらの風景もほぼ半分で出てきます。

 18年前、台湾で知り合った2人は、ある理由で別れてしまいます。それからまた18年後に日本に来て彼女を探そうとする主人公(この映画の主人公は2人いると思いますが、便宜上)と、「もう一人の女性主人公」がなぜ18年前に台湾に来たのか、今(現在の軸)何をしているのか…というストーリーです。

 きわめて大きなカテゴリではロードムービーに入りうると思うし(実際に車を運転していたかは問わない)、また「扱われている事項」についても、2023~2024年において実際に日本において研究が盛んである「ある事項」であり(ネタバレ回避)、これらまで踏み込みつつも基本はこの2人の18年前の台湾での出会いと、現在の男性主人公の日本での「彼女を探す旅」という2つの時間軸がメインといったところです。

 きわめて完成度が高く、細かい部分について解釈を個々にゆだねているかなという部分はあります。それはそれで一つの手で、完全丸投げも困りますが(作品になっていない)、大きなストーリー枠と細かい部分の設定はありつつ、「細かい部分の解釈の揺らぎを、あえてつめないことで個人で考えてね」という部分については極めて高評価といったところです。

 今年のGWはこれで決まりといったところでしょうか。

 …とはいえ、法律系資格持ちはやや気になる点もあり、以下は気にしたところです。
採点は以下のようにしています。

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 (減点0.2/「ランタン飛ばし」に関して日本で行う場合の配慮が足りない)

 この文化は旧正月からきたもので「どこが起源か」というものを定めにくいですが(日本、台湾、あるいはタイ、マレーシアほかでも似たようなものは共通して存在する)、この「ランタン飛ばし」は以下に後述するように、日本では極端に色々複雑な問題を抱えている一方で、「原始的な方法」で行うと火事になりかねませんので、ここは注意書きが欲しかったです(とはいえ、現在では行政主導のお祭り程度でしか行われておらず、個人が手作りで飛ばすということがあまりない模様だが、やろうと思えばできるので)。
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 (減点なし/参考/日本での「ランタン飛ばし」について)

 日本での「ランタン飛ばし」は2020年ごろから台湾文化ブームの中で、コロナ事情のもとでも最低限の人数で集まって開催できるお祭りとして(もともとは無病息災等を祈る趣旨のもの)各地で行われていますが(映画の描写の通り、新潟などでは台湾とは無関係にお祭りがもともとある地域も若干ある。東北に多い)、日本では、

  (1) 台湾からの文化紹介として取り入れられたこの「ランタン飛ばし」に各種の業者がいろいろな商標や特許を出願したこと

  (2) その中には安全に関するもの(映画のように、原始的に火を用いる方法のほか、火のように見えるランプを入れる等の代替案)が特許化され、特許を巡って争いが見られたこと

  (3) それを回避するために原始的に「火を使う方法」では、どの法律が適用されるか行政ですら不明であった点(現在では消防行政であろうという考え方、「空港の近くではやらない」という共通認識ができあがった)で、「誰もどこに問い合わせるのか」で混乱が見られた

  (4) 発祥を台湾とする場合でも、日本はいわゆる「台風国」であり、台風の進路如何によっては特に夏休み~秋にかけてこれらのお祭りが中止になることもあったが、主催者側が「催事保険」(イベント保険)に加入するコストを抑えたのか、「強風のおそれ」を理由とした場合に払い戻し等に応じずトラブルになったこと(実際に、2023年には「チケット代は返還して」と大阪地裁に裁判も起こされています)

 …とトラブルがとにかく多く、単独のものや複数論点混ざるものがあります(上記はできるだけ個別に分解したもの)。特に指摘するのが(3)で、日本では伝統的にお祭りとして行われれる東北など以外ではあまりなじみがない「台湾からの文化」のため「どこに許可をとってどうすればよいのか」わからず混乱した時期があります。

 この点、さらに突き詰めると、(2)の論点も発生するため「固有名詞」などが使えず(映画内でも「ランタン飛ばし」以外の字幕は出ません)、色々難しい問題ではあろうと思いますが、ここは何らかの配慮が欲しかったです。

 (減点なし/参考/男性主人公が日本で取ったルートについて)

 女性主人公が「今はそこで過ごしている」とされる場所までの移動方法についてですが、台湾の鉄道は日本の統治時代のものをできるだけ利用している部分があります(いわゆる「鉄道」。これとは別に戦後に日本などからの強力で「新幹線」もできました)。台湾は山岳地帯も多く「住める地域」が狭いため、日本の統治時代からのものを基本利用して、戦後になって多少新しく作られた路線もありますが、この「建設できる部分の狭さ」の問題で、日本でいえば複線か、単線の部分もまま見られます。

 個人的には台湾の鉄道(新幹線除く)がこうした事情であることは2024年時点でもそうなので、あえてそれと重ねられるルートを取ったのではないのかな、と考えたところです。

 (減点なし/参考/日本と台湾の郵便物の事情)

 国際郵便を扱う条約に「万国郵便条約」がありますが、台湾は諸般の事情で加入することができないため、「第三国経由」という方法が「形式的には」取られます(その国としてシンガポールが一時期普通だった)。ただ、「郵便物」を利用したいわゆる「細菌テロ」の類が見られるようになった2000年以降、「条約がどうこうより、本人に直接届けることで第三者が不測の事態を被ることがないようにする」という考えが普通になり、今では実質的に効力を失っています(特に国際的にみても台湾については。現在でも国として未承認の地域の中には、北朝鮮のように「届くかどうかすら不明」「郵便局にもっていっても受け取ってもらえない」のものもあります)。

yukispica