劇場公開日 2024年5月3日

「“胸にしまった大切な思い”」青春18×2 君へと続く道 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0“胸にしまった大切な思い”

2024年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

清原果耶に特別な思い入れは無いが、予告編になんとなく心惹かれ、公開を楽しみにしていた。

エンドロールで制作スタッフを眺めると、文字通りの台湾・日本の合作。

【物語】
36歳の台湾人ジミー(シュー・グァンハン)は大学時代に仲間と立ち上げたゲーム制作会社の社長だが、業績不振を理由に解任に追い込まれる。最後の仕事として日本の取引先との打ち合わせで東京に出張する。 打ち合わせ後、ジミーは日本の女性アミとの思い出を胸に一人列車に乗る。

アミ(清原果耶)は18年前、高校生のジミーがアルバイトをしていた台南のカラオケ屋を訪ねて来た女性だった。台湾を旅(放浪?)している間に財布を無くしたため、その店で働かせてくれと言うのだ。ジミーとアミは夏の間同じ店で働くことになる。

ジミーは4歳年上のアミに淡い恋心を抱くようになる。 バイク二人乗りで夜道を走ったり、映画を観に行ったりするうちに距離が縮まって行ったのだが、ある日突然日本へ帰国するとアミに告げられる。ジミーはハッキリ思いを伝えることもできずにアミは去ってしまった。

18年後ジミーは長野・新潟・福島と旅をしながら、18歳の夏に思いを馳せる。

【感想】
これは良かった。
邦画で良いと思えるラブ・ストーリーはなかなか無いのだが、本作(正確には日本・台湾合作だが)は数少ない秀作に数えられると思う。

シュー・グァンハンと清原果耶のダブル主演の形になっているが、目線はあくまでジミー。 若いジミーの初々しく高まる思いや、それとは対照的に大人になったジミーがやや沈んだ思いで巡る旅先で出会う人との対話や行動、心の動きがとても良い感じ。

清原果耶はこれまで落ち着いた、どちらかと言えば暗い役が多かったイメージだが、本作は珍しく気さくで明るい女性。 が、終盤になって観客に明かされる“ジミーに見せていなかった表情”は「さすが清原果耶」と思わせる演技。胸に迫るものが有った。

物語の結末に関しては「またこういうやつか」と思わせるベタとも言える展開に正直少々ガッカリしたが、それでも失望するところまでは行かず、トータルでは秀作と思えるのはそこに至る描写がとても丁寧に描かれているからだと思う。

特に36歳パートは日本の美しい風景を含む情緒感たっぷりな映像・編集・演出も良かった。ただ1つ不満なのは映像が暗い。 特に36歳パートは18歳パートより暗くしているように思えた。意図的にそうしているのだと思うが、俺は画面が終始暗いのは苦手。雪景色等普通の露出で撮っていれば、もっと素晴らしい只見の雪景色を楽しめたはず。それだけは残念だった。

劇中で、岩井俊二作品の“Love Letter”が使われる。若い2人が台湾で観賞するだけでなく、本作は“Love Letter”をオマージュしていると感じた。“Love Letter”が邦画ラブ・ストーリーの最高傑作と思っている俺にはそれが嬉しかった。そしてまた観たくなってしまった。

希少な「大人が楽しめるラブ・ストーリー」としておススメできます。

泣き虫オヤジ