「人はどうして旅に出るのだろう?」青春18×2 君へと続く道 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
人はどうして旅に出るのだろう?
18年前の台湾での初恋の思い出は切ないし、現在の日本での一人旅では、美しい景色と出逢う人々との交流が胸に沁みてくる。
誰にでもありがちなセンチメンタルジャーニーを描くロードムービーだが、「Love Letter」のエピソードが出てくるあたりから、彼女がどうなったのかについては察しがついてしまう。
案の定、終盤の展開は予想通りで、彼女の「死」に、特に驚きは感じられなかったし、主人公が「絵本」を読んで、彼女の気持ちを知るシーンでも、涙が出るほどの感動は得られなかった。
そもそも、親だったら、娘が台湾で世話になった人々に、彼女が亡くなったことを知らせるのが普通だろうし、主人公にしても、ゲーム開発者として成功した時点で、「夢が叶ったら再会する」という彼女との約束を果たそうとするのではないか?
などと思いながらモヤモヤしていると、主人公が、すでに彼女の死を知っていたという予想外の事実が判明して、正直、驚かされた。
後から思えば、「あの時、告白していたら、別の未来があったのだろうか?」とか、「たとえ彼女に会えなくても構わない」とかといった主人公のモノローグは、完全に観客をミスリードするためのもので、まんまとそれに引っ掛かってしまったことになる。
ただ、青春にサヨナラをするという主人公の旅の目的は、仮に、彼女が健在であっても、あるいは主人公が彼女の死を知らなくても、いずれにしても達成されたはずで、その意味では、せっかくのサプライズも、あまり意味がなかったように思えてしまう。
それまでの人生に一つの区切りを付け、新たな人生に踏み出そうとする上で、「旅」に大きな効用があることは間違いなく、それは、道中でどんな経験をしたかに関わらず、旅をすること自体によってもたらされるものであるだろう。
劇中で言われているように、旅では、何が起きるか分からないが、逆に、何が起きても旅の意義が失われることはないし、だからこそ、人は、旅に出るのではないだろうか?
ラブ・ストーリーとしての体裁を取りながら、そんな、「旅」について考えさせる映画でもあった。
確かに、「旅」には、心の傷を癒すという効用もありますね。
そういえば、香水については、伏線として回収されませんでしたが、葉書の匂いなど、結構重要な使われ方をしていたのに、何だったのでしょうか?