「軽く笑える」宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました LSさんの映画レビュー(感想・評価)
軽く笑える
韓国・北朝鮮双方の軍隊生活と南北間のギャップを題材とする喜劇。後者のテーマはシリアスものだと「JSA」「モガディシュ 脱出までの14日間」などが思い出される。コメディでは記憶がないが、観てないだけでたくさんあるだろう。南北の発音や言い回しの違いなど分かるともっと楽しめるのかも。
最前線にありながら互いにどこか気の抜けている両軍の対峙状況。そこに宝くじの換金という共通の目的だけでなく、共に軍規に反して敵に接触している(バレたら極刑)という立場から共犯=仲間意識が生まれるのが王道だが面白く、そこにたどり着くまでの交渉ぶりも笑える。
もちろんフィクションだが、「人質」交換後の韓国軍でのエピソードに比べて、北での描写がファンタジーになってしまっているのが惜しい。あとソウルでの換金はある意味山場になり得るのにドタバタだけで蛇足感が拭えなかった。
興味深かったのは、作中(韓国から見た)政治体制の違いから来る滑稽さは描いても、北の文化を揶揄したり経済的劣勢をあげつらうような表現は避けているように見えたこと。交渉シーンのプレゼンが南は紙ベースで北はパワポ(的な独自ソフト?)というのも、定番のエスカレーションの構図でありつつも、南の方が進んでいて当然という先入観を利用していてハッとした。
統一に淡い願いをかけたエンディングに対し、現実では鑑賞直後にNLL付近での北の大規模砲撃が報じられてげんなり。と思ったら以下の続報が出て、映画冒頭の挑発射撃を録音音声で水増しするのが本当にあるんだと妙に感心する。
> ただ、北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長は7日、6日に行ったとされる砲撃について、韓国軍の探知能力を探るための「欺瞞(ぎまん)作戦」だったと説明。沿岸に設置された「海岸砲」の砲声を模して爆薬を60回さく裂させたと述べた。【出所:「北朝鮮、黄海でまた砲撃 与正氏は前日の実弾使用否定」時事通信、2024年01月07日19時03分】