「正義の刃は快楽に通ずる のか」ソウX Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
正義の刃は快楽に通ずる のか
ロングランのシリーズですが、私は今回が初見です。これまでは、ケツが浮くのが怖くて、観ることが出来なかった。しかしそう言う恐怖ではなかったですね。ビビリ人間も大丈夫。慣れれば、目を細めつつむしろ見つめてしまう。
◉「ソウ」が発動する
癌から回復するはずの前向きな筋書きが、憎悪に満ちた報復の筋書きに変わっていった。発端は、末期癌の患者の願望を餌にした医療詐欺。医師チームだけでなく、偽患者まで含めた大がかりな詐欺団。激しく罰せられるべき行ない。
人の命を自らの欲望の手段とした者に、命の価値を苛烈に知らしめるためのゲームを与えると言う、ジグソウの行動理念が発動する…と言う解釈でよいのですよね。
◉悪を虐め抜く
廃工場に閉じ込めて、脂肪?髄液?や脳漿の絞り出しとか、骨の破砕とかの自傷ゲームを泣き叫ぶ男女に強いるシーンを見続けるうちに、倒錯観念が生まれてきました。
たとえ何十人もの命と大金を奪った者に対してであっても、レベルを越えて嗜虐が過ぎる。それならば、これは変質者の快楽殺人の執拗ぶりをシンプルに観ればよいのだ。
◉もう勧善懲悪を越えてしまう
いや「快楽」ではなく、ソウには大義があるのだろうし、しかし善悪とか報復とか、少年だけは助けたいと言う気持ちを越えた、仕事動画のような感じ。
ソウの変質者としてのゲームの質に対する執念は比類なきものであり、それが観る側の興味を痛く惹きつけて、結局、画面から目を離せなくなった。観客も次第に、拘束具を付けられてしまった訳で、正義対悪と言う概念は、目の前からは取り払われていたことにもなる。
ジグソウはそのままならば、「糸鋸」の意味で、ジョン・クレイマーはきっと、ヒトの独善的な欲望の塊を、乾いた心でシャーッと丁寧に切り裂いてしまいたいのでしょうね。正義の刃を振るうことは、もしかしたら快楽にも通じるのかも知れないです。