「傍観の否定」年少日記 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
傍観の否定
世界中の子供達を優しく抱きしめる作品、と同時に昔子供だった世界中の大人達を許し癒してくれる作品でした。
本作は親から虐待され続けた兄の視点、そして親から虐待される兄を傍観し続けてきた弟チェンの視点、このふたつの視点が前半・後半とに分けて語られていくので、両者の気持ちに入りこみやすかったです。単純ではないストーリー構成が巧みでした。
チェンが「僕は優秀だったから、優秀でなかった兄を無視し続けた。でも、僕は結局、優秀でも何でもない普通の人になった。」みたいなことを語っていましたが、これほど現在社会の本質を語るセリフはないと思います。賢い人間ぶって暴力を傍観することの罪深さですよね。胸に残りました。
チェンは、彼のその後の人生も変えてしまうほどに、家族の中で傍観者でい続けたことに対して傷つき悔いています。
しかしこれは家族間の話だけではなく、社会全体の話なのではないかと、途中から気付かされた私がいました。私も今の社会に存在するあらゆる暴力に対して傍観者でいるのではないだろうかと。改めなくてはいけないなと。
だから、チェンが生徒と友達になり彼らの話しを受け入れるラストシーンには、人として見習うべきところがたくさんあって優しく柔らかな気持ちになりました。
チェンからは、恐らくチェンの父親も親から受けていたであろう暴力の連鎖を、チェンの所で止めよう、傍観するのは止めようという強い意志を感じられました。それは、世界中のあらゆる暴力への否定、傍観への否定にも感じられます。全ての人達に観て欲しい作品です。
確かに彼には何もできなくてただ傍観していたことに対する後悔や自責の念があり、あんなことは二度とあってはならないという一念から誠実に教師の仕事に向き合ってきました。でも、自責の念や自分の父親に対する嫌悪感から、自分は父親になれないとして自らの結婚生活を危機に陥れてしまいました。今回、兄の日記を読み返したことで兄の分も生きようと前を向いて、妻と寄りを戻し、父となる決意を固めるとよいのですが…
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