劇場公開日 2024年7月12日

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「ひたすら意欲作を撮り続けるアルモドバル監督の想いが凝縮したような一作」ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ひたすら意欲作を撮り続けるアルモドバル監督の想いが凝縮したような一作

2024年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

かつて互いに惹かれあった男たちの物語が主軸となった西部劇です。30分程度の短編なので展開自体は非常にスムーズなんだけど、時間以上の密度を感じさせます。

テーマ的にもジャンル的にも、ジェーン・カンピオン監督の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)をどうしても想起してしまうんだけど、カンピオン監督の映像がある程度耽美性を帯びているのに対して、こちらは男たちの情念がほとばしる、生々しさがにじみ出ている点が興味深いです。

『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(1987)など、初期は刺激的かつアナーキーな作風という印象が強かったアルモドバル監督だけど、巨匠となった現在むしろ表現とテーマの幅が広がっているところがすごい。『パラレル・マザーズ』(2022)に至っては、母子関係という最も基本的な人間関係を捉えなおす作品と思わせて、スペインの負の歴史にまで踏み込んで見せました。

本作も、「西部劇」というジャンルそのものの見直しを観客に促すような、「映画のための映画」という側面が強く出ているように感じました。

アルモドバル監督はこの後初の長編外国語作品『The Room Next Door』の公開を控えているので、もしかして余技でこの作品を撮ったのかもしれないけど、それでも極上で隙のない美術に満ちた映像を作り上げるあたり、さすがと言わざるを得ません!

yui