「超一流のレストランはこうして価値を維持していく」至福のレストラン 三つ星トロワグロ 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
超一流のレストランはこうして価値を維持していく
94歳の今も好奇心でいっぱいのフレデリック・ワイズマンが、同じく今年で創業94年、ミシュランの三つ星を獲得してから55年になるフランス、ロワール県にあるレストラン、トロワグロにカメラを持ち込む。
上映時間は今回も240分と長尺だが、それには理由がある。オーナーシェフと各部門の担当者が綿密に打ち合わせる新シーズンの献立の中身、躍動的な仕込み、ミリ単位で位置を決めていくテーブルセッティング、価格高騰に苦しむソムリエたちのワイン選び、客の好みを確認する予約担当の気配り、等々。レストランであればどこでもやっているような準備作業が、見たこともないような高いレベルで行われている。目指すのは変わらぬ超一流なのだ。いつも情報量がいっぱい詰まったワイズマン作品は、料理と相性が良かったのだとつくづく思う。次々と登場する人物の名前と肩書きを字幕で一切紹介せず、画面を見ていればそれが誰だか分かる仕組みになっているところも、映画的かつ合理的だ。
そして、トロワグロと日本料理の繋がりが明らかになるところで感動しない日本人はいないだろう。これは、別に食通でなくても、一流とは何か?サービスとは何か?がよく分かる食にまつわるドキュメント。忙しない日常をいっとき忘れて、案内されたテーブルについてみてはいかがだろう。
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