「ドイツの敗戦が生んだ芸術家」アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家 FormosaMyuさんの映画レビュー(感想・評価)
ドイツの敗戦が生んだ芸術家
ドイツの戦後世代の芸術家を追ったドキュメンタリー+空想の映画。映像で紹介されるその作品も抽象度が高く、解釈しようと考えているとすぐに眠くなる。目が覚めたところで記憶に残ったのは戦後世代を代表する形でナチ式敬礼の写真を作品として発表したくだり。周りの人間たちがそれをなかったことのようにふるまうことへの問題提起ということだったと思うが、ふと思い出したのは太宰治が日本の敗戦直後に日本人が皇居遥拝をしなくなったことを批判していたこと。どちらも自分たちで熱狂し、しかし祭りから覚めた後はそれがなかったかの如く振る舞う人間の愚かしさを指摘しているように思えた。敗戦という傷ついた世界の芸術家ということか。その他、「存在と無」、「存在の耐えられない軽さ」という西洋哲学の単語が頭に残った。ただのドキュメンタリーではなく映画的な映像の美しさがあるところはさすが。
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