ゴンドラのレビュー・感想・評価
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優しさと心地よさでユニークに包み込んだ快作
ジョージアの山あいに伸びるロープウェイを舞台に、セリフ全くなしのミニマリスティックな物語が展開する可愛らしい一作だ。冒頭のシークエンスに触れただけで、このフォトジェニックな環境と人々の暮らしがナチュラルに胸中へと沁み渡っていく。そして何よりもロープウェイをゆく「上り」と「下り」のゴンドラが空中ですれ違う”一瞬”の連続によってユニークなドラマを紡ぎあげる手腕は見事。これを単調な繰り返しと見るか、尽きぬアイディアの宝庫と見るかで評価は変わるだろうが、私は後者となって終始笑顔で酔いしれた。ヘルマー監督といえば「ツバル」で知られる異才だが、私は本作を観ながら不意にフドイナザーロフ監督が遺した「コシュ・バ・コシュ」を懐かしく思い出したりもした。掛け替えない日常や瞬間をロープウェイという場に集約させるとは、なんてロマンティックなのだろう。限られた空間を巧みに活かし、優しさと心地よさで彩った快作である。
ちょっとエキセントリックで笑えます
ジョージアって、昔のグルジアですよね。
ほぼ無声映画。
と言っても音が無いのではなく、登場人物がほぼほぼ喋らないだけ。
笑ったり、唸ったりはします。
私が確認した限りでは、人間は二語しか喋らなかったですね。しかも、何故か英語とイタリア語。「OK」と「bravo」。
ちょっとエキセントリックで笑えます。
俳優は、多分、ほとんどジョージア人。
知らんけど。
のんびりとした面白い映画でした。
私は好きだな。
音楽は、素晴らしく良かった。
幸せな気分になれる映画です
ゴンドラ(ロープウェイ)は普通は観光目的で世界各地にあるが、このジョージアの小さな村にある(実在する)ゴンドラは住民が交通手段で使用しているものだそうだ。しかもソビエト時代に作られたものなので古くて狭くドアは簡単に開くこのゴンドラに乗るのは、現代人の我々にはちょっと勇気が入りそうである。
セリフなし映画なので眠くなるのを心配していたが、主演の2人の女性乗務員のゴンドラがすれ違う度に繰り広げられるネタ振りの応酬が面白く大笑いしそうになる程痛快でしたし、2人ともとってもチャーミングだし、住民もおおらかだし、意地悪な駅長にだって親しみがもてたりします。なので睡魔など一瞬たりとも訪れませんでした。
セリフなしだからこそ雄大な景色に集中できるし、人々の動きや仕草にしっかり目が行くことができます。洋画では字幕を追いながら、邦画ではセリフを聞きながら物語を考えながら観る映画鑑賞スタイルから解放されるってのは、こういう事か!と思いました。
素敵な映画をありがとう!
冒頭で惚れるほどの美しさ
冒頭、ゴンドラの駅舎が映された瞬間に、惚れてしまった。
全編、どの瞬間、どの場面を切り取っても色合いと明暗の対比が完璧に美しく、いつまで眺めていたい気持ちになる。
はっきりと言葉として発せられるのは、途中に出てくる「OK!」だけ。あとは、当時人物たちの行動や表情から読み取るしかないが、無声映画と違うのは、背景音がとても自然で豊かなこと。古き良きゴンドラのある村の中に、自分が身を置いている気持ちになれる。
<ここから、自分が読み取った内容に触れながら話します>
※セリフでの説明がないため、盛大に誤読している可能性もありますが…
最初、ゴンドラに棺を載せて運ぶシーンがあるが、あれはおばあさんの連れ合いのご遺体かと思いきや、実は主人公のIVAの父のものだったということか。
棺を運ぶゴンドラに対して、仕事の手を止めて祈りを捧げる敬虔な村人たちが、埋葬の時に誰も手伝わないことに驚いたが、IVAは「父を見捨てて、死に目に間に合わなかった薄情な娘」として見られていたということなら、まぁ理解できる。おばあさんが、鍵を手渡さずに地面に落とすのも、IVAが添乗するゴンドラに乗るのを躊躇うのも、「今更、なんで戻ってきた」ということなのだろう。
だが、ゴンドラの乗務員としてIVAが働き続けるうちに、おばあさんや、冒頭でIVAが歩くと窓を閉めた村人たちとも、関係はだんだん修復していく。(おばあさんとIVAは、親戚の可能性もある)
※この部分については、解答がでました。追記、再追記をお読みください。
人と人との関係ということで言えば、女の子に、手製のゴンドラを使ってプレゼントしたケーキを、「不味っ!」という顔で拒否された男の子も、IVAの手引きで一緒にゴンドラに乗ったり、グラスハープを奏でたりしながら、関係を深めていく。
同じ乗務員のNINOとは、ゴンドラのすれ違いでの形式的なあいさつから始まり、往復ごとに一手ずつ進む山頂駅でのチェスや、ランチのオープンサンドのサプライズ差し入れ、乗客がいないのを良いことにゴンドラのすれ違い時に、趣向を凝らして相手を喜ばせようとするやり取りなどを通して、恋愛関係に…。
やがて、ゴンドラは、IVAとNINOの2人によって、村人を巻き込んだ、壮大な合奏のコンダクターへとなっていく。
つまり、ゴンドラは人と人とを繋ぐ象徴であり、ゴンドラのすれ違いは、人と人との出会いや待ち合わせの象徴でもあった。
その中でただ一人、ゴンドラが関係の修復や改善に繋がらなかったのが駅長。
制服を基準にした乗務員選びなどに見える、あからさまな下心。障がい者への徹底した差別。チェス相手のNINOも、コンコンと音を鳴らすことで呼びつけるなどのマチズモ体質が、IVAとNINOの2人によって見事に拒否されていくのは、見ていて爽快。
挙げ句の果てには、逆ギレして、あろうことか彼自身の生業であるはずのゴンドラのロープを叩き切って、そのおかげでゴンドラの直撃を受け、あえなく退場していった。
優位性にあぐらをかいたり、怒りに身を任せた行為は、必ずしっぺ返しがくることを自戒させられる。
映画のラスト、ゴンドラに2人のすがたはなかったが、車椅子の彼が新たな駅長となり、男の子と女の子が海賊に扮して、ゴンドラのすれ違いを利用した遊びに励んでいるのは微笑ましかった。
きっと2人は、NINOの就職した航空会社の近くで一緒に暮らし始めたのだろうな。
出てくるモノは、みんなアナログなのだが、それが温かく、ゴンドラ自体も、手仕事でさまざまなカスタマイズができるところが、とてもほっこりする。
何回でも見返したい映画にまた一つ出会えました。
<追記>
フロワァーさんが、「棺の方は乗務員か」と書かれていて、そういえば、棺の上に乗っていたのは畳んだ制服か…とか、だから乗務員を募集していたのか…とか、スッキリしてきましたが、あのおばあさんの娘ってことでしょうか。だから、IVAにいじわるだったのかもしれません。でも、埋葬の場面は、まだちょっと疑問が残ります。
<再追記>
レビューを書く前には、色々影響を受けたくないので、他の方のレビューやパンフレットは読まずに書いているのですが、購入してあったパンフレットを先ほど読んだところ、IVAが村に帰ってきた理由について「父が亡くなったのだ」と書いてありました。また、あのおばあさんは、「父と暮らしていた女性」ということでした。IVAが戻ってきたので、家を明け渡すことになったために、あのような行動に出たということでしょう。
制服も、IVAと父が一緒に写っている写真には、ブレザーにネクタイの車掌姿の父が写っているので、棺に載せたのはそれで、下心がある駅長が、若い女性を選ぶために、別にスカートタイプのあの制服を用意したのだと結論が出ました。(とてもスッキリ!)
セリフがなくても楽しめる
ゴンドラ大喜利w
映画館で無音声映画を鑑賞するのは初めてで少し不安でしたが、観終えた時には無音声映画だったことなどどうでも良くなっていた程に楽しめました。
ゴンドラの乗務員の2人が、本来なら退屈であろうこの仕事を、ユーモアと悪戯心で面白おかしく乗り越えて行く様を描いているわけですが、思っていた以上にやらかしててかなり笑えました😂
ストーリーらしいストーリーはありませんが、惹かれ合う2人の心の機微を上手く表現していたと思いますし、2人の図太い精神はひたすら爽快で痛快です。夜景を舞台にしたロマンチックなシーンは美しくもどこか儚げで、愛に満ちた素晴らしいシーンでした。
とにかく「ゴンドラ大喜利」である(笑)次から次へと繰り出される悪ふざけが最高!ある意味ワンシチュエーションものでありますが、豊かなアイデア、ユーモア、そして愛に溢れた素晴らしい作品でした。
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本作は埼玉県川越市にある、創業から約120年の歴史を誇るスカラ座にて鑑賞致しました。スクリーンは一つのみ、客席数124席のいわゆるコミュニティシネマです。
外観、内装含め昭和の香り漂うレトロな雰囲気。客席は段差があまりないフラットなタイプですが、スクリーンは割と大きく見やすいです。場内暗転の際には「ブビー!」というブザー音が流れます。普段はシネコンでは上映されない作品や、過去の名作のリバイバル上映などやっています。
このスカラ座、資金難により早ければ2年後に閉館してしまうそうです。現在「川越スカラ座閉館回避プロジェクト」を実施中で、LINEスタンプや川越スカラ座グッズの購入による支援が可能です。(詳細はHPにて)館内にて募金も行っております。ご興味を持たれた方は是非、この独特な雰囲気の映画館を体験してみてください。
感性が…
想像力は無限大
ジョージアのゴンドラが舞台の映画で明確なセリフは一切無し。
それなのにこれほどカラフルで童心に帰ってワクワクするような遊園地のような映画。
行き来するだけのゴンドラでこれほどの遊びというか芸術が完成するとは。
セリフの無いミュージカル、ジョージアの大自然も素晴らしいし、主役2人も美しく、文句無しで素晴らしい映画!
1点、雇用主の意地悪オッサンを懲らしめるのは分かるけど、最後は残酷過ぎたので、それはマイナスポイント。
セリフなしでもエンターテインできる
主人公ニノとイヴァのゴンドラの乗務員ふたりのやりとりが最高に面白いです。
ゴンドラが交差するたびに、ネタの応酬をふたりがやっているのですが、
想像力豊かだし、創造力も素晴らしいですよね。
すごいクリエイティビティだし、お互いがお互いを楽しませようとしているのが刺さりました。
ゴンドラ自体のエクステリアに装飾を施したり、ゴンドラを止めて楽器演奏&合奏をしたり、
ゴンドラに車椅子&おじさんを吊って運んだり、ゴンドラの中でセクシーな姿で相手を魅了したり、
ゴンドラの中で食事会をしたり、ゴンドラを高速で動かし駅長をやっつけちゃうしで
セリフなしで、よくここまでできるな〜と思いました。
実に豊穣な作品だと思いました。
やっていることはいかがなものかと思うものの、ファンタジーとして見ればとてもカワイイなと。
ファイト・ヘルマー監督には今後も注目したいと思います。
ファンタジーなのか危険なテロ行為なのか・・・?
「ゴンドラが往復するだけでドラマになるの?」と思っていたかつての自分にゴンドラの一撃を食らわせたくなる一作
ジョージアの山間を行き来するゴンドラで働く二人の女性の物語、という予告編そのままの内容で、彼女たちの自宅や村内の短い描写を除いて、ほんとに行きかうゴンドラだけで展開するドラマ。しかもセリフがほぼない、無声映画のような作りのため、ほんとにこれで映画になるのかな?と思いそうなところですが、よくここまでゴンドラという装置の使い道を思いつくな、と感心するほどに多彩な演出で楽しませてくれます(二人が無限湧きの資材を持っていたり、建築無双なのは目をつぶるとして)。
ゴンドラで高所を移動する緊張感と高揚感、そしてすれ違う刹那の一瞬の非現実感が毎回新鮮で、ゴンドラの往来という基調がありながらもそこに加わっていく変調を楽しむ、というところからも、全体的にどことなく音楽的な作品であると感じました。
小難しい設定とか読み解きとかをしないで、純粋に画面で展開するドラマを楽しみたい、という人にはぜひともお勧めしたい作品です。中盤にほんのちょこっとだけドキドキするようなシチュエーションがあるので、家族連れでの鑑賞だとそこだけ緊張感が走るかもしれないけど。
本作のゴンドラは実在するそうだけど、あの年季の入った駅舎やゴンドラ見たら、そりゃそうだよね、と思うはず!
2人の若い女性乗務員のパントマイム
ジョージアの小さな村で、服のサイズだけで採用が決まり、ゴンドラの乗務員として働き始めたイヴァと、すでに乗務員を務めてたニノの2人の若い女性。短気な駅長には腹が立つことばかりだが、すれ違うゴンドラでイヴァとニノはゴンドラを飛行機や車の装飾をしたり、バイオリンやラッパを演奏したり、やりたい放題。また、地上の住民たちも受けて・・・という会話の無いパントマイムのような作品。
ニノとイヴァの2人も雇ってそんなに乗客がいるのかと思って観ていたが、そんなの関係ないハチャメチャなストーリーで、そこそこ面白かった。
イヴァの着替えのシーンから、ニノの下着姿まであり、2人はレズなのかと思ったが、そこは不明。
翼やプロペラを付け飛行機にしたり、船にしたり、ゴンドラに装飾をしたり、溶接までよくするわ、なんて思ったが、ほとんどファンタジーみたいな、非現実的な作品なんだと思ってみると楽しめる。
このゴンドラはジョージア南部の村フロに実在してるらしく、実物を観に行きたいと思った。
東欧ジョージアの小さな村、古いゴンドラの物語。 乗務員の女性二人と...
【”色彩が抜群に綺麗なファンタジックなおとぎ話。”鑑賞中、ずっと幸せな心持で観れる素敵な映画です。心優しく悪戯好きなゴンドラ乗務員の女性二人の恋模様を、楽しく描いています。】
ー ご存じの通り、ファイト・ヘルマー監督は前作「ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を」でも披露した台詞無し映画で知られている。
そして、今作の”色彩が抜群に綺麗なファンタジックなおとぎ話”でも同様である。ー
■村に帰って来たイバ(マチルド・イルマン)は、欠員になったゴンドラの乗務員として働き始める。もう一台のゴンドラの乗務員ニノ(ニニ・ソセリア)は意地悪な駅長とチェスで戦いながらも、業務を遂行している。
そして、イバとニノはゴンドラですれ違う度に見つめ合い、徐々に惹かれて行く。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ゴンドラの乗務員と思われる人の棺桶がゴンドラに詰まれるシーンから物語は始まる。棺桶の上には乗務員の制服が置かれている。
そして、少しイジワルそうなお婆さんが付いている。
・お婆さんは、イバのゴンドラに乗る時にはお金を払わない。そしてイジワルである。もしかしたら、新しい乗務員へのイジワルかもしれないが、イバが入り口に立ちふさがると渋々と手に持った鳥のケージから卵を一個渡すのである。
■イバとニノのゴンドラがドンドン、デコレートされて行くシーンは面白くって素敵である。ニノが外装に手を加えてニューヨーク行きのプロペラ機にすると、イバはサンモリッツ行きのバスにする。更に蒸気船にしたり、果ては月ロケットになるゴンドラ。クスクス可笑しい。
・二人だけではなく、今作では小さなカップルも描いている。内気な男の子とおしゃまな女の子との部屋の間の可愛いゴンドラ。
そして、イバは二人をゴンドラに乗せると男の子は女の子に花一輪を恥ずかしそうに渡して、仲良しになる。そして、三人はグラスハープを奏でるのである。
<夜のゴンドラでの、村人を巻き込んだ美しいパフォーマンスも素敵である。それに怒った意地悪な駅長はゴンドラを高速で動かして邪魔をしようとするが、二人はヒラリトと荷物を落とす藁の上にふんわりと着地。一方、駅長には高速のゴンドラがぶつかって・・。
そして、二人は意地悪な駅長が絶対に乗せなかった車椅子のオジサンを、ゴンドラに吊るして、運んであげるのである。
今作は、色彩が抜群に綺麗なファンタジックなおとぎ話であり、鑑賞中、ずっと幸せな心持で観れる素敵な映画なのである。>
<2024年12月22日 刈谷日劇にて観賞>
台詞がないのに聞こえる囁き
採用理由は制服のサイズ
最初の乗客が棺桶という、まさかのスタート。
先任が亡くなった(?)ことによりイヴァが採用され、先輩のニノとの関係性を中心に展開してゆく。
チェスのやりとりなんかは『PERFECT DAYS』を彷彿とさせるが、この辺まではやや退屈。
悪ふざけがエスカレートしてからが、本作の本領だろう。
飛行機や船、ロケットなんかに“改造”してゆくあたりは、コメディ的な面白さがあって好き。
同性愛的な要素は個人的には不要だったが、それでも主演ふたりの美しさで場がもっていた。
しかし、サスガに後半はやり過ぎだろう。
勝手にゴンドラを止めてセッションしたり、夜間に運行したり、挙げ句は車椅子を吊って走らせてしまう。
本人は大喜びだったが、落ちたりどこかに引っ掛かったりしないか気が気じゃなかった。
最後は売り上げ金までバラ撒くし。
駅長に腹が立つ面はあるにせよ、あれは怒られて当然というか、普通にクビだし下手すりゃ逮捕だよ。
ピッキングや弁当のすり替え、ストーキングに不法侵入に覗きなど、犯罪行為もオンパレード。
気付かなかったり、何故か好意的に受け止めたりするけど、冷静に恐いわ。
最初にイヴァが疎まれていた理由や、ニノが受け取っていた封筒の中身(転職の採用通知?)も不明。
ふたりが喧嘩してから仲直りまでの描写も雑。
メインのみならず小さなふたりのやり取りも可愛らしいし、景色や色彩も美しかった。
セリフ無し(オーケィだけハッキリ喋ってたけど)が生み出す雰囲気も嫌いじゃない。
でも、もう少し後半やりようがあったのでは。
イヴァとニノが駅の両側に住んでいて、終盤までゴンドラ越しにしか絡まない方がよかったかも。
お洒落なTVコマーシャルの一場面がえんえんと続くような映画
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