「楽しかった!」左手に気をつけろ Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
楽しかった!
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序盤は、子どもの“ごっこ遊び”を通して描かれたディストピアかと思った。
公園で子どもたちが騒いでいるくらいの見慣れた景色の中で、人心を操る犬笛で煽られた幼児性が異質な者を排除する。
ところがストーリーが進むにつれ、これはディストピアではないことに気づく。
占い師の言葉に惑わされて、思わず犬笛を吹いた主人公は、すんでのところで本来の自分に立ち返った。
代わりに連れて行かれた世界は、みんなが自分に正直に生き尊重し合うユートピアだった。
占い師の言った“本当の相手”とは、彼のことではなく、彼女と出会い、ユートピアに導かれた“本当の自分”だった。
ときに言葉はいかに人を欺くかが面白かった。
また、占い師は同時に言っていた。“覚悟”が必要だと。
今の時代、自由な精神で自分らしく生きていくにはたしかに“覚悟”がいる。
不寛容な空気に対する柔らかい異議申立てのようでありながら、井口監督の視力は、人間の善性と希望を見つめていた。
地球上に残されている最後の資源は想像力。どうぞ井口監督、これからも存分に見せてください。
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