「映像美は凄いのだけど、現実より美しく描いて問題ないのだろうか」わたくしどもは。 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
映像美は凄いのだけど、現実より美しく描いて問題ないのだろうか
2024.6.3 アップリンク京都
2024年の日本映画(101分、G)
奇妙な世界に迷い込んだ記憶を失くした男女を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本は富名哲也
物語の舞台は、新潟県佐渡島
その中腹にある寺の舞台から二人の男女が飛び降りる様子が描かれて始まる
そして、物語は廃坑になった鉱山の廊下にて、記憶を失くした女性(小松菜奈)が清掃員のキイ(大竹しのぶ)に見つかる様子が描かれていく
キイは彼女を自宅に連れて行き、そこに住んでいた少女アカ(田中椿)とクロ(三島天瑠)は、彼女にミドリという名前をつけた
ミドリはここに来るまでのことを一切覚えておらず、キイは館長(田中泯)に頼んで、一緒に働かせてもらうことになった
ある日、動物の鳴き声に導かれたミドリは、そこで同じように記憶を失くしている男アオ(松田龍平)と出会う
彼女は施設の清掃員をしていて、寡黙な男だった
一方その頃、街に住む高校生の透(片岡千之助)は同級生たちからいじめられていて、それを苦に自殺を試みようとしていた
そんな彼の元にアオが訪れて、透の自殺は失敗に終わった
映画は、佐渡の山奥の雰囲気に癒される系の映画であるものの、主題は不明瞭で、何をテーマにしているのかは分かりづらい
ヒーリング効果もあるので爆睡してもおかしくないが、意味がわからないので起きている可能性の方が高いかもしれない
一応は、自殺は良くないよね、という一言で終わりそうなものの、それ以上を汲み取るのは難しい印象
敢えてなら、そこがかつての鉱山で、罪人が島流しにあって死んだ場所ということもあるので、自殺は天国にも地獄にも行けずに流刑地で彷徨うという意味合いがあるのかもしれない
そこで記憶を失っている意味がよくわからず、罪を償わせる意味を持たすのなら、生前の記憶を有して、死んだことを後悔し続けるとか、実は起こった良き未来が頭の中を駆け巡って、こんなところに来ては行けないと思わせないとダメなような気がする
自殺に対するアプローチも「ダメだよ」レベルなので啓発にもならないし、天国にも地獄にも行けず、生前の記憶も亡くなるならハッピーじゃんと思う人がいてもおかしくないように思えた
いずれにせよ、最終的には自殺をしたことを思い出すものの、それで終わりという感じになっているのがなんとも言えない部分がある
これらの体験を美しい世界のように描いている感じも微妙で、死後にアイデンティティが欠損するというのは、精神的幇助に近いと思う
そういった意味において、本作の意図はわからないのだが、雰囲気だけは良いので引き込まれる部分はあるのかもしれません
ひょっとして、死神の手招きのような映画だったのだろうか
そのあたりもちょっとわからない部分が多かったように思えた