「モノは良いが表現は古すぎる」宇宙戦争 ロンドン壊滅 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5モノは良いが表現は古すぎる

2025年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

H・G・ウェルズのSF小説『宇宙戦争』が原作。
この小説は1898年に発表され、火星人が地球を侵略する様子を描いている。
この小説は過去に二度くらい映画化されたが、有名なのが2005年のスティーヴン・スピルバーグ監督 トム・クルーズ主演のものだ。
あの作品は圧巻ともいえるものだった。
あれよあれよという間に事態が急変していく様は、見る側に暇を与えない。
これぞハリウッド スピルバーグ作品。
それから約20年 この作品がイギリスからリリースされた。ウェルズの故郷だ。
だが非常に悩ましく思える。
冒頭登場する3人の学生
彼らの緊張感というのか雰囲気がまったく変化することなく最後まで同じリズムを繰り返している。
何故いまさらそんな作品を作ったのだろう?
穿った見方だが、監督は何度もリメイクされた有名な作品で興行収入を挙げたかったのか、名前を売りたかったのかと思ってしまう。
さて、
この小説『宇宙戦争』を元にしたアメリカのラジオドラマ
1938年10月30日にオーソン・ウェルズがラジオ番組「マーキュリー放送劇場」で放送したもので、火星人が地球を攻撃しているという内容があまりにもリアルだったため、多くのリスナーが本当に火星人が襲来したと信じてしまい、パニックが起きたことがあった。
それほどこの小説はリアルだったのだろう。
我々が勝手にイメージしたタコのような火星人の様相も、これが元ネタだ。
そのあれよあれよという当時のパニックになるような雰囲気を、スピルバーグ監督はうまく映像化した。
ラジオの鬼気迫る声が人々をパニックに陥れるほどだ。
それが良く表現されていた。
私もDVDを買ったほどよかった。
しかし、
この「ロンドン壊滅」版にはそのような緊張感はない。
そのほとんどが学生三人の会話に終始する。
何故そんな手法を取ったのだろう?
さて、、
そもそもこの小説はいったい何を描いているのだろうか?
地球よりもはるか高度な科学技術を持った生命体
永い間地球を観察していたことがナレーションされる。
オチは同じで、細菌やバクテリアの存在だった。
これは、人間の盲信を描いているのではないだろうか?
誰かの勝手な意見 思想 ドグマ 私利私欲
奪い取るという勝算の計算
それによる無慈悲な攻撃
それらしい大義名分を掲げた植民地化活動
彼ら火星人の目的は地球の植民地化計画と言ったところだろうか。
小説が発表された1898年当時は、米西戦争 ヨーロッパの帝国主義 産業革命の進展…
パニックが起きた当時の第二次世界大戦下の世界情勢 侵略 攻撃 殺戮 強奪…
この思考の延長線上ですべての物事を見てしまうのが、人間なのかもしれない。
戦争のきな臭いにおいが立ち込めていたのだろう。
だからこそ、ウェルズはこの小説を書いたのかもしれない。
そして繰り返されるきな臭い世界情勢…
「サイコ神父」だけは新しかった。

R41
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