「大林宣彦作品はノスタルジーでも本作は喪失感と孤独感の人間愛作品」異人たち ヤマッチさんの映画レビュー(感想・評価)
大林宣彦作品はノスタルジーでも本作は喪失感と孤独感の人間愛作品
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ベースとなる設定は大林作品と同じで、両親を幼くして亡くした主人公アダム。現在はタワーマンションに一人暮らしをしている。幼少期を過ごした郊外の家に訪れたところ亡くなった両親と再会します。そしてタワーマンションには自分以外の住人ハリーがいることを知ります。ここから微妙に設定が異なっています。孤独に生きてきたアダム。それは同性愛者であることが原因で他人とのコミュニケーションをうまくとれないことがベースにあります。同性愛であることは両親に告知する事、それにより虐めにあっていたことも言えないままだった後悔も彼にはありました。両親との再会により告知する機会を得たのでした。この展開から明らかに大林作品との方向性の違いが明確になります。大林作品は両親は幽霊や亡霊ではないのかそれとも主人公の想い出が回想されているかというファンタジーでした。しかし本作は幽霊、亡霊という意味合いはありません。過去の想い出回想ではなくできなかった思いを伝えており、それにより反応する両親の姿を描いています。これはアダムの妄想、心のイメージではないかと考えられます。ハリーとの関係についても衝撃的な結末を向えます。ラストは小さな光となっていきます。希望の光ではなくせつないラストです。鑑賞者に考えさせるような深い物がありました。
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