「次作も引き続き期待しております」若き見知らぬ者たち TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
次作も引き続き期待しております
内山拓也監督作品で、磯村勇人さん、岸井ゆきのさん他粒ぞろいの出演者に期待しかなかった本作。サービスデイの丸の内ピカデリー午前の回はいつものことですがガラガラ。。何なら、同時間帯に隣のシアターで上映している公開4週目の『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の方が入っていく人が多かったかもしれません。
で、観た感想ですが、「期待が高すぎたかな、、、」とかなりのトーンダウン。冒頭でも触れた俳優陣は皆さん確実に素晴らしいのですが、作品としては設定も脚本もモヤモヤしつつ、中盤以降は正直「長いなぁ…」と思いながら観ていました。
とは言え、独特な世界観やその表現方法には、やはり作家性の高さを感じます。現実の中で夢想するように過去を振り返ったり、はたまた幻想を見たりする演出は、特に過労と睡眠不足で意識混濁気味の彩人(磯村勇人)の危うさをこれでもかと言うほど感じ、そしてあのタイトルがドーンと出るシーンは鳥肌物。更に、終盤の壮平(福山翔大)とファビオ(ファビオ・ハラダ)の試合シーンはガチ感が凄く、その激しさに思わず身悶えてしまいました。
ところがその一方で、肝心のストーリーはやや煮え切らない。テーマからしてずっとダウナーなのは全く悪くないと思いますし、そういう現実を生きざるを得ないリアルがあることは解ります。ところが、この物語に見る「現実」はあまりに抽象的でリアリティが感じられないのです。特に「病人」や「ある組織」という対象にミステリアスな印象をもたせる有りがちな設定。後にフンワリと回収していきますが、その経緯から現在に至るまでが語られないため納得度は低いまま。また難病の母・麻美(霧島れいか)、物語上都合よく登場して悶着あったり、反面、存在感を忘れるくらい姿が見えなかったり。勿論、難病を軽く扱うつもりはないでしょうが、結果的には現実味からは程遠い印象を感じて残念です。(ちなみに、症状は全く異なるものの、私も母が難病を発症して約2年半、主に家族で介護をした経験があります。)
とは言え、完成度という意味ではしっかりと高く、内山監督のポテンシャルは大いに感じられます。そして勿論、磯村さん、福山さんの熱演はそれだけで観る価値高いですし、染谷さんのフォルム込みの安定感、岸井さんの包容力、そして何といっても今作でなかなかの爪痕を残した東龍之介さんなど、俳優たちの演技については見どころ満載です。
と言うことで、内山監督、次作も引き続き期待しております。