劇場公開日 2024年10月11日

「幾つものアンコンシャスバイアス」若き見知らぬ者たち ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5幾つものアンコンシャスバイアス

2024年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

興奮

知り合いの話だが、短期間に三度「職質」を受けた人がいる。

2008年に起きた「秋葉原通り魔事件」をきっかけに休止されていた歩行者天国が、
2011年にテスト開催されたとのタイミングで。

本人の迷彩ズボンにリュックを背負っていた外見も
疑わしかったのかもしれない。

警官側からはけして触れようとはせず、
自らリュックを開けて中を見せるよう(強く)促すところは
本作で描かれている始終と共通。

勿論、やましいことは無いので唯々諾々と従い、
直ぐに解放された由だが、それにしても
「続けて三回かよ!!」と憤慨していた。

ただ、その「職質」が、後々の悲劇を呼び込む契機になることも。

警官だった父親は、ある事件で手柄をたてたものの突然に退職、
カラオケバーを開く。

が、何故か莫大な借金を残し突然自殺。
それを見た母親は正気を失う。

兄の『彰人(磯村勇斗)』は昼には工事現場で働きながら
夜は父が遺したバーを開け、背負った借金を細々と返済する。

弟の『壮平(福山翔大)』はMMAのプロとなり、
階級のチャンピオンを狙えるランキングにいる。

兄弟二人と『彰人』の恋人で看護師の『日向(岸井ゆきの)』で
母『麻美(霧島れいか)』の面倒を見るが、
家の内外での奇矯な行動に身も心も休まる暇はない。

社会情勢を扱った昨今の作品同様、
ここでもやはり幾つかの課題が提示される。

一つは公助に頼らず、自助に閉じてしまう介護の問題。

一旦沈んでしまえば、再び浮かび上がるのは困難で
「親ガチャ」とか「社会格差」で片づけるには
余りにも理不尽な。

または、一たび面倒を起こすと、それが常について回るラベリングの問題。

周囲も色眼鏡で見てしまい、それが命を脅かすのに直結するケースがあるのは
由々しき事態。

或いは公的機関が、時として権威を振りかざすことも俎上に乗る。
直近でも「大川原化工機事件」があったばかりだが。

疑いをかけられた側だけでなく、
かけた側の一部にも心に傷を負う者はおり、
それが『風間』家の悲運につながるのは、
なんともやりきれない連環だ。

終盤の盛り上がりに寄与する迫力満点のMMAの試合シーンは、
『壮平』が我が身に降りかかった不運の鬱憤を晴らす場として機能するかと思っていたら
然にあらず。
あくまでも肉体と肉体の純粋なぶつかり合いとして描かれる。

暴力とは異なるすがさがしさに、
鑑賞者は僅かながらの光明を見ることになる。

ジュン一
トミーさんのコメント
2024年10月16日

彩人も度々点鼻薬? を使ってたり、薬を嚥んでたり、自分も病気なので公助に頼らなかったのかと思いました。
普通の瓶で殴るとかプロレスでも無いですけど。

トミー