劇場公開日 2024年10月11日

「評価は分かれるとは思うが、行き過ぎた警察に問題提起する意味では。」若き見知らぬ者たち yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5評価は分かれるとは思うが、行き過ぎた警察に問題提起する意味では。

2024年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年368本目(合計1,460本目/今月(2024年10月度)19本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。

 父親の残した借金の返済と母親の介護にふりまわされる主人公と(この映画の主人公をどこに取るかは多々あると思いますが)、境遇は似ても苦しい総合格闘技を目指す弟との対比、そして2023~2024年とはちょっと思えない無茶苦茶な日本の警察のいわゆつ職務質問を描く映画です。

 個人的には問題提起型の映画なのかな…とは思いましたが、日本において「行き過ぎた」職務質問は問題にはなっても実際に当事者が処分されることはレアで、ご存じの通り「行き過ぎた」程度だと結局従わざるを得ないので(従わないと面倒なことになるのはご存じの通り)、問題提起といって「警察官はこの作品をみて学習せよ」というものではなく、「日本にはこういう不条理がある」という部分における問題提起なのかな、といったところです。

 この「警察のいきすぎた職務質問」についてはちょっと(映画内での)表現の度合いが厳しい(というより、ここは戦後の混乱した日本が舞台なの?というほど)ところもあり(一応、映画ではPG12扱い)、一方で回想シーンもあり時間軸が数軸(2軸かあって3軸か)あること等、理解がかなり難しいのかなといったところです。「フォリ・ア・ドゥ」は結局のところアメリカの刑訴法という特殊な分野の知識を要求するだけですが、こちらは日本国内の問題提起型の映画ではあっても、その「問題提起」を広くしすぎたためにあれこれ疑問点がわくシーンも多々あり、厳しいかなといったところです。

 なお、この作品も色々な理由から「暗い」映画ではあります。また、貧しい生活環境にあることは「映画内での虫表現」などからもわかります(極端に虫表現が苦手な方は避けたほうがよいかも)。ただ個人的にはおそらく「行き過ぎた職務質問によるところ」と、「(明らかに生活が乱れている等)見えないSOSを発見して警察や行政等に相談する周りの目」というった問題提起の映画だろうといったところです。

 採点に関しては以下まで考慮しています。

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 (減点0.3/主人公が多額の借金を背負った理由が説明されていない)

 他の方も書かれている通り、この映画、「よくわからない点」が結構多い映画だったりします(細かい部分がカットされている?)。ちなみに先立たれた父親がどうして多額の借金を作ったのかも確か描写なしだったような気がします。

 ただ、相続人が「当然に」借金を相続することはなく、単に相続放棄をすればよいだけの話でしかありません。この点、詐害行為取消権(現在では「~取消請求」)との関係が気になりますが(424)、「相続放棄は身分行為で、相続放棄を対象に詐害行為取消権を行使することはできない」というのが最高裁判例なので(昭49.9.20)、「どうして借金を背負っているんだろう」というのがよくわからず(最高裁判例と異なる構成を取っている?)、このあたりからわかりづらいところが多々あります。
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yukispica