「生と死の境界」若き見知らぬ者たち HKさんの映画レビュー(感想・評価)
生と死の境界
主人公と周辺の人間の執拗な対称性の提示によって
生と死の境界がいかに薄いもの(常に頭に銃口を向けられている状態)であること、
また、ときに軽い気持ち、ときに正義のつもりの行為が、
見知らぬ他人のその境界を意図せずに簡単に超えさせてしまうことがある
恐ろしさを描いているようだ。
後半の圧巻の長尺の格闘シーンは、
命を燃やす生の象徴と同時に生きぬくことの困難さを表しているようでもある。
最後まで前半の理不尽さや辛さを解消するための、後悔の念の吐露や復讐もなく、
さらに全般に演者の感情表現が抑制され、
なぜ主張しないのかと、ときに憤懣やるかたない気持ちになり、
結果、ただ目の前の事を受けとめ、想いをはせることから
この故人の転生、遺志を継承する物語に一縷の希望を見出そうとするのはやっぱり辛いが、
それが容赦のない多くの現実なのかもしれない。
カタルシスを得ることができず、
心に打ち込まれた黒い釘が抜けないまま劇場を去らなければならないが、
その楔が鑑賞後もいろいろ考えさせられる余韻になっているし、
本当に挑戦的な(おそらく不満や批判も覚悟している)すばらしい映画だと思った。
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