「バカな怨霊の逆恨みで修道院のシスターたちが死んでいく気の毒な映画w」ブラックサン 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
バカな怨霊の逆恨みで修道院のシスターたちが死んでいく気の毒な映画w
スペインは1936年~1939年まで内戦に苦しんだ後、フランコのファシズム政権が誕生、1975年のフランコ死亡まで継続する。
映画はこの内戦終了の1939年、主人公が神のお告げを伝える聖少女として注目されたことを紹介した後、その10年後の1949年、成長した彼女がシスターとして修道院に現れるところから話が始まる。
何だか背景が物々しくて、いい感じではないか。彼女が部屋に落ち着くや否や、椅子が勝手に倒れるわ、壁に首吊りの落書きがあるわ、誰もいないはずの廊下で大きなノックの音が響くわ、ホラーの色が濃厚に描かれていく。
やがて教え子の少女が異常現象に巻き込まれ、主人公の身の上にも次々におかしなことが生じていく。さて、その正体は…ということになるのだが、映画はこの辺りから急にトーンが変わって、超自然現象の背後に内戦時代の悲惨な出来事があること、自殺したシスターの怨霊が修道院に取り憑いていることがわかってくる。ホラーからミステリー仕立てになっていくのである。
最後は怨霊が修道院の古参のシスター2人に恨みを晴らして幕引きとなるのだが、その理由が観客にはどうも納得できるものではない。
自殺したシスターは内戦で修道院を襲った兵士の一人にレイプされ、子供を産む。その子は無事に育ったものの、ある時、熱病に襲われたため、身体を冷やすために水を張ったバスタブに入れられたところ、暴れた挙句にバスタブに頭をぶつけて死亡。母親のシスターも自殺してしまい、以後、その怨霊が修道院に取り憑いているという。
しかし、その怨霊はレイプした兵士ではなく、全然関係のない修道院で学ぶ少女を自殺に追い込んだばかりか、母子の面倒を見たシスターたちに恨みを晴らすというのだから、訳が分からない。
かといって悪霊そのものの恐ろしさを描いた訳でもないし、悪魔祓いのエクソシスト要素もゼロときている。
恐らくは怨霊が恨みを晴らす勧善懲悪的な作品を意図したのだろうが、内戦がどうしたこうしたとかあれこれ手を出した結果、話が歪みまくって意味不明な作品になり果ててしまったのだろう。もはや論評に及ばず、であるw ただ、主人公のシスター・ナルシサの清楚な美しさは印象に残った。