「忘れても、思い出すから」君の忘れ方 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れても、思い出すから
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喪失からの再生という有り触れたテーマながら、少し変わったアプローチが個人的には好印象。
劇中で哀しみを抱えた人物のほとんどが自分勝手だ。
向き合い方はそれぞれなのに、自分のそれを相手に押し付けたり、相手のそれを簡単に否定したり。
昴や池内が顕著だが、一番ヤバかったのは母。
ストーキングはまだしも、極薄の根拠で医師の責務を放棄した件は一発くらいぶん殴られるべきだ。
それ故に観ていてイライラしたりもするが、そのぶん昴が母の目を覚まさせるシーンは良かった。
「自分の死後、遺された人にどうあってほしいか」は、別れた恋人への感情にも似ている気がする。
自分は、知らないところで幸せでいてほしい、かな。
ハッとさせられたのは、「忘れるのではなく、思い出し方を変える」という考え方。
割と序盤で出てしまったが、これが答えだと思う。
本作で印象的だったのは、やはり西野七瀬。
台詞はほぼ録音音声のみで、表情と台詞を組み合わせた芝居は完全に封じられた状態で好演していた。
特に昴の前に現れる際の哀しみでも喜びでもなく、かといって無でもない表情は絶妙。
また、久しぶりに見た岡田義徳のヤバさと人の良さを同居させたバランスも見事。
何となく全員がぬるっと前向きになったのは正直物足りない。
あれだけ関わった『つきあかりの会』を投げっぱなしで終わったのもややモヤモヤする。
死期を悟っていたかのような録音もご都合主義。
特に好きなキャラやエピソードも思い当たらない。
それでも、新しい視点を与えてくれた点は評価したい。
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