「ナハトムジーク」サイレントラブ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
ナハトムジーク
この主演2人の純愛もの、共に体の障害を負っているというものをどう乗り越えていくのか…というところが見どころだなと思いましたし、主題歌もミセスで盛り上げてくれる、さて監督は…内田監督…。正直嫌な感じはしてました。
案の定その予感が当たり、純愛なんてものはそっちのけの暴力シーン満載の誰得な映画でした。優しさなんてそっちのけの内田監督自己満映画でした。
正直言って序盤からきな臭さ全開で、飛び降りようとする美夏を爆速で止めようとする蒼のシーンからうーんこの感が否めず、その後の展開も全く惹かれませんでした。
蒼が美夏をストーカーしまくってるシーンでえぇ….つてなりながら観ていましたが、ピアノの弾ける悠真に代わりに弾いてもらって気を惹こうとするシーンで一体どんな恋愛が発展するのかと思ったら別に発展はそこまでせず…かと思ったらなんか2人惹かれあっててみたいな訳分からん描写には頭を抱えざるをえませんでした。
体にハンディキャップを背負った主人公という物語で、そこをどう描くのかというのに注目していたんですが、目が見えない事へのサポートと声を出せないことでのコミュニケーションくらいなので、それを売りにしていた割には予想の範疇でしか物事が進まず、ただの基盤としてしか動かしていなかったのが残念でした。監督のやりたかった事とは違うのかもしれませんが、そういう題材にしているという事を自覚してほしかったです。
今作の最大の問題点は謎の暴力描写です。この作品全年齢対象の作品のはずなんですが、蒼の声の出なくなった理由が喉を刺されて声帯がやられたんだと思うんですが、あらすじにもそんな事は書いておらず、ヤンチャ仲間とつるんでいるシーンはありましたが、それがまさか学生時代のトラブルで声が出なくなった、しかもその際に殺人を起こしてしまい、とんでもないくらいの出血量だったりと、純愛を求めていた人はもうこの時点で唖然としていたと思います。
悠真が賭博で滞納しているということで拉致られるという恋愛映画では見ねぇよというシーンからの細い鉄で手をぶっ刺すとかいう任侠ものみたいな事をやってしまいます。そのままグリグリグリグリして、しかもしっかり映すので、拒絶反応を起こす人はもう映画館出ていっちゃうんじゃないかってくらいです。自分もドン引きしながら観ていました。
そこに助けにくる蒼の謎アクションも入り、そこでボッコボコにしたりされたり、それで全員血まみれ、美夏も返り血を浴びていたりと、これ恋愛映画だよな?と何度も疑ってしまいました。
改めてこの映画は全年齢対象の作品なんですが、R指定に突入してもおかしくないくらいには過激な描写が満載でした。映倫はあのバイオレンスシーンを観なかったのか、それともスルーしたのか、杜撰な仕事にため息が出てしまいました。プロデューサーが止めるべきだったのかもしれません。
そこに至るまでの古田新太さん演じるベテランの清掃員が盗撮で疑われる流れとか全く意味分かりませんでしたし、それによって蒼が警察に止められる意味もこれまた分かりませんでしたし、盗撮してたのは女性講師だったとかいうどーでもいいネタバレが最後にあったりと、ほんと雑に繋いでるなーとしか思えませんでした。
美夏を庇って刑務所にいった流れも唐突ですし、チンピラチームも簡単に逃げてしまってますし、警察の質問もどこか抜けていましたしで、その後の流れにもなかなかイライラさせられたんですが、ラストシーンはもう最悪としか言いようがありませんでした。
蒼が働いてる港にズカズカと突入して蒼の名前を呼びまくって現場の人間に迷惑をかけまくる美夏に同情の余地なんてさらさらありませんし、それでいてトラックを無視して歩いていて轢かれそうになったところを蒼が助けてキスして終わりなんて、もうふざけてるとしか思えませんでした。バイオレンス作り終わって満足したから適当に作ったんだろうな感が滲み出ていました。
山田くん…前作の「BAD LANDS」はかなりの当たりを引いたなーと思ってたんですが、よくよく考えたらこれまでとんでもない地雷作品に付き合わされていて、今作も言わずもがな。そもそも喋らない山田くんのラブコメってファンはそこまで求めてないと思いますし、なぜこの役を当てがったんだと思いました。でも表情とかは素敵でした。
浜辺さんも野村さんも本当に良い演技をされているのに、脚本のせいでなんだか滑稽だなと思うシーンがいくつもありました。
ミセスの主題歌や久石譲さんの劇伴も聴き馴染みが良かっただけに、劇中の雰囲気とは全くあっておらず、無駄遣いに思えてしまいました。
内田監督、良い作品は撮られる方なんですが、過激だったり大袈裟な描写が苦手だったんで、今作はそれが悪い方向に爆発してしまった作品だと思います。「マッチング」もかなり不安になってきました。現状今年のワーストです。
鑑賞日 2/8
鑑賞時間 12:40〜14:50
座席 I-16
自分の中でMrs. GREEN APPLEとSUPER BEAVERは、予告で流されると良さげに思える二大巨頭です。
逆に言うと、本作は良曲をもってしても流しきれない脚本だったわけですが…笑