「恋愛の障壁てんこ盛り、社会問題トッピングの胸焼け映画だけど、なぜか無味無臭な映画」サイレントラブ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛の障壁てんこ盛り、社会問題トッピングの胸焼け映画だけど、なぜか無味無臭な映画
2024.1.16 イオンシネマ久御山
2024年の日本映画(116分、G)
事故によって視力を失ったピアニストと事件によって声を失った青年を描くラブロマンス映画
監督は内田英治
脚本は内田英治&まなべゆきこ
物語の舞台は神奈川県横浜市(ロケ地は東京都立川市)
横浜音楽大学のピアノ科に通っている金持ちのお嬢様・美夏(浜辺美波)は、事故によって大怪我を負い、視力を失ってしまった
手術は成功し、いずれは視力も戻ってくると言われたが、それがいつになるかはわからない
教師(名越志保)、教員(島田桃依)から作曲科への転科を勧められるものの、美夏は頑なにピアノにこだわり続けていた
ある日、旧校舎にてピアノの練習をしようと訪れた美夏は、そこで用務員の青年・蒼(山田涼介)と出会う
蒼は高校時代の事件によって声を失っていて、美夏は蒼を同じ大学のピアノ科に通う学生だと勘違いをしてしまう
ピアノを弾けない蒼は、偶然その旧校舎を訪れてピアノを弾いていた非常勤講師・悠真(野村周平)をつかまえて、「金を払うから代役としてピアノを弾いてほしい」と訴える
闇カジノに入り浸って借金を抱えている悠真はその申し出を受け、1回5万円でピアノ演奏をすることになった
お金が必要になった悠真は、用務員だけではなく、友人の弥生(円井わん)の父の作業場で働き始め、親友の圭介(吉村界人)は無理をしているのではないかと心配していた
ある日、悠真に金を渡している蒼を見た圭介は、彼が何か良くないことに巻き込まれているのではないかと疑うようになっていた
そして、その解決をしようと、地元の半グレ・横道(SWAY)にある依頼をかける
それは横道にとっても申し分のない依頼だったが、それに美夏も巻き込まれることになったのである
映画は、障害を持つ男女のラブコメだと思っていたら、なんか違う方向に話が進み、ダークなクライムムービーへと変貌を遂げてしまう
美夏と蒼のジレンマもさほど描かれず、悠真を含めた三角関係も淡白なものになっていた
そもそもが大学の非常勤教師が生徒に手を出すと言うアブノーマルな部分はさらりと流しているし、反社が登場して危険なシーンが登場したり、経済格差がひょっこりと顔を出したりしていく
挙げ句の果てには職業格差と偏見、社会問題などもぶち込まれるシナリオになっていて、設定&展開を盛り込みすぎて何の話かわからなくなってしまうのである
ラブコメの恋愛の障壁をこれでもかとぶち込む全部盛りの映画で、正直胸焼けがしてしまう内容だったと思う
ラストで蒼が罪を背負うとしても、被害者である悠真が不問にすれば問題ないように思える
美夏のために嘘をつくことを考えたのだろうが、あの場面に無関係の人が放り込まれて、盲目の自己防衛は正当防衛と見做されるので芝居を打つ必要もない
なので、どうやったらこのシナリオでOKが出たのかがわからず、そこらへんのシナリオ学校で提出された不合格の原稿をつなぎ合わせたものよりも薄っぺらい印象しか残らないのである
いずれにせよ、大画面で浜辺美波の美しさを堪能するとか、ピアノ演奏に耳を傾けるぐらいしか見どころがなく、エンディング曲「ナハトムジーク」のMVの方が出来が良い作品になっていた
とってつけたようなラストシーンが感動を呼ぶかは微妙で、個人的には色んなキャラ&アーティストの無駄遣いと言う感じが否めない
若者向けのファンムービーであるものの、王子様的な役割でもなく、共感できるようなキャラが一人もいないので、上映後の無音をどう耐えるかと言う映画だったではないだろうか