「暴力やアクションは必要だったのか?」サイレントラブ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
暴力やアクションは必要だったのか?
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中盤までの、成りすましによって生じる三角関係の展開は、「シラノ・ド・ベルジュラック」のような切なさも感じられて、それなりに引き込まれる。
だが、物語が、拉致やらリンチやらの血生臭いトーンに転調するに至り、こうした暴力やアクションは本当に必要だったのか?という疑問が生じてくる。
しかも、わざわざ主人公が罪を被らなくても、過失とか、緊急避難とかで、ヒロインが大きな罪に問われることはないのではないか?という、より大きな疑問も湧き上がってくるのである。
恋人たちに大きな試練を科すためなのかもしれないが、こうした納得のいかない展開には、どうしても「あざとさ」を感じざるを得ない。
気が強くて性格の悪そうなヒロインにしても、悪い奴なのか良い人なのかよく分からない恋敵にしても、やたらと卑屈すぎる主人公にしても、どのキャラクターにも魅力が感じられず、感情移入ができないのは残念としか言いようがない。
「ビアノを弾く人はみんな裕福」といったステレオタイプなイメージにも辟易させられる。
何よりも、主人公とヒロインが、相手に対して抱く「同情(夢を叶えてやりたい)」とか「感謝(いつも助けてくれた)」といった気持ちが、どのようにして「恋愛」に発展したのかが実感できないのは、ラブストーリーとして致命的ではないだろうか?
すれ違う2人の悲恋が、まったく胸に響いてこないのも、ラストの美しいキスシーンが、あまりにも唐突で空虚に感じられるのも、そのためだろう。
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