「切なさもキュンも足りません!」サイレントラブ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
切なさもキュンも足りません!
予告から、「もうこれ絶対泣ける切ないラブストーリーじゃん!」と期待して鑑賞してきました。結果、その予想と期待は空振りに終わりました。
ストーリーは、声を出すことができない青年・沢田蒼が、交通事故で視力を失った音大生・甚内美夏に出会い、心折れずに生きる彼女に惹かれるものの、なかなか自分の思いを伝えられず、偶然見かけたピアノが上手い北村悠真に、自分の代わりにピアノを弾いて彼女に聴かせてほしいと金を渡して頼むが、これが原因となってトラブルに巻き込まれていくというもの。
過去に陰をもつ青年が、自分にはない輝きをもつ女性に惹かれ、正体を隠しながら彼女のために健気に尽くすが、代役として仕立てた男に横取りされそうになるという流れは、概ね予想通りとはいえ、悪くなかったです。温かさと切なさを感じる蒼の眼差し、三角関係に発展しそうな展開、キーアイテムとしてのガムランボールなど、どれもラブストーリーのよい演出となっていたと思います。
しかし、後半になって周囲の人間が絡み始めたところから、物語があらぬ方向に転がっていきます。これは完全に予想外でしたし、結果としてマイナスだったのではないかと思います。少なくとも浜辺美波さんにあんなことさせてほしくなかったです。美夏がそれほど蒼を大切に思っていたということなのかもしれませんが、そもそもいつの間にそんなに強い思いを抱くようになったのか、よくわかりません。もっと映像でそれを感じさせてほしかったです。
また、蒼についても同様で、なぜあそこまで美夏のために尽くしたのか、何が彼を突き動かしていたのか、もっと映像で納得させてほしかったです。もちろん理屈の上ではわかるのですが、心でそれを感じないと共感できず、感動もできません。
いっそ暴力要素は一切排除して、もっと人物の背景や心の変化をじっくりと描き、すれ違い、届かなかった思いが、最後にやっと通じ合い、愛はどんな障害も乗り越える強さがあるのだと感じさせてほしかったです。そういう意味では、本作は切なさもキュンも全く足りていなくて残念でした。
主演は、山田涼介くんと浜辺美波さんで、声を出せなかったり目が見えなかったりという難しい役どころでしたが、お二人とも好演しています。脇を固めるのは、野村周平くん、吉村界人くん、中島歩さん、円井わんさん、古田新太さんらで、それぞれに持ち味を発揮しています。
共感&コメントありがとうございます。
予告篇が全てだった感じもしますね。三人で出かける前に一度抱き合ってたりすれば、ショックで逃げ出すのも納得出来た・・と個人的に思いました。
身も蓋も有りませんが、乗り越えるのは無理!と感じてしまいます。
暴力シーンは何かこだわりがあるようで、指紋を拭き取ったり、ドリルをぶっ刺すまで物色してたり、ちょっと変な感じでした。