「油断ならない凄い作品」デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
油断ならない凄い作品
原作未読。
数年前NHKの「漫勉」で原作の作画風景が放送されてて、世界観に興味があったので、コミックスを買おうかボヤボヤしてる内に劇場版公開が決まり、そのまま予告編も見ずに観賞。
いや、見逃さなくてホントに良かった。
世の中をシニカルにいじりながら、時事的なメタファーも多く、浅野いにお先生特有の「人を食った」という表現がピッタリくる様な絵柄のコントラストで見せるコメディかと思えば、「大人になりきれない俺たち私たち」をガッツリ青春ドラマで見せてくる感じもまた、引き込まれてしまう。
奔放なおんたんとおおらかな門出とのやり取りが軸かと思えばまさかの…
麻痺してしまった日常の隣でうごめく非日常。
「正義」の脆弱性と暴走、欺瞞。
匿名の大衆という恐怖。
そして、我々歪んだサブカル民・ネット民たちの心臓を掴んで離さないギミックの数々。
読者や観客に「セカイ系」みたいな単純な分類をさせない、油断ならない作品。
原作者がかなり映画制作に関わってる分、私は原作読んでないけど、作品をよりしっかり感じられてる気がする。
登場人物達が交わす無駄話にも見えるセリフの一つ一つが研ぎ澄まされていて、会話劇も見事。
キャラクターも全員最高。
(お気に入りはやはりおんたんの兄貴)
後章があるので、ここで傑作認定はできないが、それでもこのクオリティは観る価値あり。
あのちゃんの演技の良さは、彼女のラジオ番組で(何なら「あのちゃんねる」時代から)垣間見えていたものの、これほど素晴らしいデキに仕上がるとは。
ただ、彼女自身の「表現者」としての才能を考えれば、これは納得の結果なのかも。
そして、「漫勉」視聴者には「あ!」とならざるを得ないラスト。
5月の後章公開が待ちきれないよ。
【再観賞】
二回目も良かった。
日常と非日常が隣り合わせで進んでいくワクワク。
ベランダ・屋上・歩道橋…など、簡単に乗り越えられそうな柵を境に外の世界と接した場所で心を交わし合う主人公たち。
しかし、柵の向こうには「死」が待っている…のか。
あの「イソベやん」のぶっきらスティックの続きはどうなるんだろう?