劇場公開日 2023年12月29日

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「これから行く道、これまで来た道」ブルーバック あの海を見ていた うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これから行く道、これまで来た道

2024年1月1日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

オーストラリアの小さな入り江を故郷とする娘・アビーと母・ドラの、過去と現在を描いた作品。
児童書原作のヒューマンドラマ映画ではあるのだが、過度な感動演出が少なく時に自然の摂理をドライに突き付けてくる場面もあり、「感動映画」「成長映画」が苦手な人にも無理のない距離感で観られる作品だと感じた。

ドラから海の豊かさ、儚さ、恐ろしさを教わり、彼女と同じように海を愛するようになるアビーが、成長するにつれドラとは異なる自分なりの海への貢献の方法を見つけていく点や、ドラが従事する環境保護活動が過激な1か0かの主張ではなく、人々の生活の糧である漁場の維持と本来の生態系の維持を両立させようとする共存のスタンスである点も良かった。

現在のドラとアビーが、セリフやカメラの誘導が無くとも表情や視線のわずかな動きだけで互いに注意を払い合っていることが伝わる重厚な演技が素晴らしかった。アビー役の俳優さんは年代別に3人いるのだが、それぞれダイビングの訓練を積んだそうで、見応えの有る水中シーンが出来上がっていた。

アビーという人物、ドラという人物、二人が築いた親子関係、二人が繋いだ襷……、様々な見方ができる物語で、何かと進路や人生を考える機会や、家族や家庭の歩みを振り返る機会の多い年末年始にぴったりの作品だった。

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うぐいす