「【”私が小説を書くのは生きられない人生の代わり、許されない人生の代わり。”今作は、パトリシア・ハイスミスの謎に包まれた作家人生と名作を生んだ原動力に迫るドキュメンタリーなのである。】」パトリシア・ハイスミスに恋して NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”私が小説を書くのは生きられない人生の代わり、許されない人生の代わり。”今作は、パトリシア・ハイスミスの謎に包まれた作家人生と名作を生んだ原動力に迫るドキュメンタリーなのである。】
ー 私事で恐縮であるが、一時期パトリシア・ハイスミスの小説に嵌った事がある。
そして(晩年の少しイジワルそうな写真を見た事もあるからかもしれない。)、元祖イヤミスのようなミステリー小説の根底にある、人間の闇の部分、嫉み妬みを描き出す内容から”相当にひねくれた性格の女性ではなかったか”と思ったのである。
だが、その後、今作で頻繁に映像が出るトッド・ヘインズ監督のケイト・ブランシェットとルーニー・マーラのW主演による秀作「キャロル」を見て、その作品を最初にパトリシア・ハイスミスが、クレア・モーガン名義で出版したと知った時に、少しだけ彼女の屈折した性格形成の理由が分かった気がしたのである。
今作では、彼女が少女時代から同性愛者であった事や、母との確執(最後には縁まで切っている。)が彼女の且つての恋人たちから語られる。
そして、驚いたのは彼女が若い時の写真の美しさと、同性愛者が集まるバーでは同性女性達から多くの想いを寄せられていたという事である。
今作では彼女が残した日記やノートに加え、本人の貴重なインタビュー迄描かれている。そこには、孤高で人間嫌いというイメージとは少し違う素顔が見えて来るのである。ー
<彼女は、後年「キャロル」を実名で出版している。
そして、インタビューで“貴女は幸せで会うか。”と問われ、少し恥ずかしそうに”幸せと言えるかもしれない。”と答えているのである。
”私が小説を書くのは生きられない人生の代わり、許されない人生の代わり”
この彼女の言葉から私は、”自由と恋愛が彼女の作家としての原動力ではなかったか”と思うのである。>
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