劇場公開日 2024年1月5日

  • 予告編を見る

「今この時期に見るかどうか」コンクリート・ユートピア 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今この時期に見るかどうか

2024年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

金曜日午後、東京都心・有楽町マリオン内の丸ピカ(丸の内ピカデリー)は、席数600を超える松竹系の旗艦映画館。
そこに観客は、韓流ファンとおぼしきおばちゃんを中心に、僕を入れて40人までいなかっただろう。
キラー・スマイルの国際的俳優、イ・ビョンホンの名演は健在だったが、日本国内ではもう客を呼べないのか。
いや、それ以前に、大地震がつい先日発生したこの日本では上映のタイミングが悪かったか…。
もう何年も前から、一部の韓国映画は日本の先を行くような内容、セールスを誇る存在だった。しかし、昨年後半は、「君たちはどう生きるか」「ゴジラー1.0」「PERFECT DAYS」(正確には日本映画ではないが)と、セールスや内容が国際的に注目される日本映画が相次ぎ、久々に韓国映画に対して溜飲が下がる思いがした。
今も公開中の、先の日本映画3本を再び(ゴジラは既に2回見たが)見て、2024年の映画鑑賞の1本目にしてもいいかな、と思っていたが、気になる韓国映画としてこちらにシフトしたら、上記のように館内はガラガラだったのである。
配給元にとっては、積極的に宣伝できず、場合によってはお蔵入りしても不思議はない内容だったろう。そこを公開してもやはり、宣伝がいきわたっていなかったか…。
しかし、内容的には韓国映画のエンターテイメント性の高さを実感できるものだった。
地震(はっきりそうとも示していないが)後の景色、アパート(韓国では日本のマンションをそう呼ぶようだ)内の人々の軋轢、主人公をめぐるサスペンスタッチな内容などなど、いずれも十二分に面白く、表現・描写も日本映画や今どきのハリウッド作品に比べると結構にハードで本気度を感じさせてよかった。

大地震が襲った能登は、筆者の出身地と同じ県だ。能登には直接的な縁者はいないものの、故郷の人びとの苦境を知るにつけ、東京でのんびりこんな映画を見ていていいのか――と思う(うそ)。

映画の結末も中途半端なハッピーエンドではなく、「パラサイト」にも通じる、作り手の映画魂が感じられてよかった。

2時間10分の尺はやや長めで、もうちょっと整理されていれば満点にしてもよかった、と思う。
丸ピカでは、どういうわけかパンフレットが売られていなかった。
ないのだろうか? 店員に聞かなかったけれど。
ひょっとしたら、被災地の石川県内の映画館では上映されていないのでは? と思って調べたら3館で上映している。しかし、ほとんどチケットが売れていない印象。
石川県ではやはり、避けたい映画なんだろう。

町谷東光